『呪術廻戦』は“虐げられた者の復讐”を描くーー芥見下々の「死」をめぐる表現を考察

『呪術廻戦』「死」をめぐる表現力

 テレビアニメも2クール目に入り、ますますの盛り上がりを見せる芥見下々の『呪術廻戦』(集英社)。「週刊少年ジャンプ」で連載されている本作は、人間の負の感情から生まれた呪霊を祓う呪術師たちの活躍を描いたバトル漫画だ。

 主人公の虎杖悠仁は「呪いの王」と呼ばれる両面宿儺の器となる身体を持った呪術師。師匠にあたる五条悟の指導の元、伏黒恵たち仲間の呪術師と共に呪霊たちに戦いを挑む。

※以下、ネタバレあり。

 最新巻となる第14巻では「渋谷事変」がより混迷を極めていく。

 2018年10月31日。ハロウィンの夜に渋谷駅周辺に帷(とばり)という結界が張られ、大勢の人々が閉じ込められてしまう。彼らを救うために五条悟は一人で渋谷駅地下に向かうが、呪詛師・夏油傑と特急呪霊の漏瑚たちの罠にかかり、封印されてしまう。

 夏油たちの目的は「五条悟の封印」と「虎杖の中にいる宿儺の封印を解き仲間に引き込む」こと。五条救出のため、渋谷駅周辺に待機していた虎杖たち呪術師は渋谷駅地下に向かい夏油に与する呪霊、呪詛師たちと戦うことになるが、敵も味方も次々と命を落としていき、虎杖も敵との戦いで意識を失う。夏油に仕えていた双子の少女・奈々子と美々子に見つかった虎杖は、宿儺の指を一本食べさせられる。その後、漏瑚が宿儺の指を10本食べさせたことで宿儺の力は強まり虎杖から肉体の主導権を奪う。しかし宿儺は誰にも制御できず、奈々子と美々子を殺し、漏瑚も焼き殺してしまう。

 死の間際、漏瑚は(おそらく心の中で)いっしょに戦った特急呪霊の花御と陀艮に「すまない」と謝り「我々こそ真の人間だ」と言うのだが、そこに宿儺が登場し「人間に成りたかったのか」と問いかける。

 宿儺は、漏瑚たち呪霊が、人間の立場を奪おうと試みたことを「下らんな」と言い、人間も呪い(呪霊)も「寄り合いで自らの価値を計るから皆弱く矮小になっていく」のだと呆れる。

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