『ハコヅメ』衰えない人気の理由は“パワーワード”にあり? 作者・泰三子ワールドの魅力

『ハコヅメ』人気の理由は?

ストーリー構成・人物描写も秀逸

 連載が2年目に差し掛かると、警察ブラックネタが大方出尽くした代わりに、川合・藤ペア、源・山田ペアを中心とした登場人物のキャラクターが固まり、縦横無尽に動き回るようになる。

 10~12巻「同期の桜」編と、14~15巻「奥岡島事件の恩賞」編では、己を賭して職務を全うする警察官の尊さが長編で描かれ、大きな感動を呼んだ。

 モーニング編集部は、『ハコヅメ』の人気の理由をパワーワード以外にも、伏線の埋め込み・回収といった構成力の素晴らしさ、登場人物の内面の緻密さや人間関係のリアルさ、この2つを挙げている。

 特に同期の桜編では、4巻と6巻の交通事故の回(その27、その49)も伏線となっており、いつも気丈な藤ペア長が取り乱す様子が2度に渡って丁寧に描かれる。これが意味するものが何なのか、11巻(その95、96)でようやく明かされるのだ。ストーリー構成、人物描写が非常に上手い。

 とは言え、同期の桜編が終了した次の回では、ワンピースの上から亀甲縛りをした中年のおじさんがいきなり出てくるのだから流石だ。何せ新刊の発売時に公式Twitterアカウントを通じて「ジャイアントキリング(編注『GIANT KILLING』)の隣に平積みしてください」と告知する作者である。悪ノリ具合も見どころの1つに違いないだろう。

 3周年記念の回(その143)では、奥岡島事件を経て成長した川合の姿が描かれる。これからも楽しみは尽きない。

■井上郁 
言語学者、フリーライター。英文学・言語学・メディア記号論を専攻。マンガ・アニメ・ゲームを総合文化研究の俎上に載せ、記号論の観点から考察しています。

■書籍情報
『ハコヅメ~交番女子の逆襲~(15)』
泰三子 著
定価:本体640円+税
出版社:講談社
公式サイト

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