『ハコヅメ』は人生のヒントが満載の名作に 主人公・川合麻依は”人は変われること”を証明し続ける
現在『モーニング』(講談社)にて連載中の『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』では女性警察官をメインに、様々なキャラクターが登場する。警察官という謎に包まれた職業のことはついカタく考えてしまいがちだが、そんなイメージをひっくり返すコミカルな人物ばかり。しかし、その腕や知識は確かなもので、真摯に仕事へ取り組む姿勢は、我々も見習うべきところがある。
主人公・川合麻依の成長の記録
個性的なキャラクターが目立つ中、主人公である川合麻依(かわいまい)は至って"フツー"の女性。安定しているからというありがちな理由で警察官を目指し、当初は特に大きな志も抱いてはいなかった。公務員試験を端から受けて、合格出来たのが現職のみだった……というだけである。
それどころか幼き頃、父が運転していた車がスピード違反で捕まり、反則金を払ったことを未だ引きずっていた様子。彼女の家は決して裕福ではなかったため「なけなしのお金を巻き上げられた」と、役人に対して良いイメージを抱いていなかった。登場直後は激務であり、人々から嫌われる仕事であることに限界を覚え、退職寸前まで追い込まれていた。
しかし、ペアであり上司の藤聖子(ふじせいこ)の影響によって、彼女は考えを改めていく。厳しい中にも温かな優しさを秘め、その上バリバリのキャリアウーマン。「なんとなく」で警察官になった川合にとっては、衝撃的な出会いだっただろう。ペアを組んだことにより仕事のやりがいや、警察の存在意義を見い出していく。
ただ、新米警察官であるため、能力は発展途上。運動も苦手であり、まだ多方面に目を配れるほどの余裕はない。未熟な川合をカバーすべく、藤を始めとした上司たちは彼女に手を貸していくのだ。川合は冷静で時折毒も吐くが、仕事に関してはまっすぐで一生懸命。犯人を追い詰める動機が「ここで逃したら藤先輩に怒られる」など、かなり不純であることも多いのだが……。それでも逃げ出さずに立ち向かっていき、序盤に比べれば大きく成長していることは間違いない。
川合が最も成長したエピソードといえば、藤不在の際に強姦事件が起きてしまった時のことだろう。男性との交際経験がないために、性犯罪に関する事件は苦手としており、取り調べに苦戦を強いられていたのだ。
性犯罪が起きた時の取り調べや聞き込みは非常に酷なもので、想像を超えるような質問を被害者にぶつけ、隅々まで調べ上げなくてはならない。その内容とは被害に遭った人間が口にすることもためらうような、デリケートなものばかり。しかしその部分を知らなくては、調査が一向に進まないこととなる。
藤がいなくても独り立ちができるように、男性警察官である山田が指導に入った。この出来事がきっかけで、また川合は一つ前に進めたのだ。もちろんそれは周りの協力も必要不可欠だが、彼女の心変わりが大きく影響している部分もある。序盤の川合のままなら、この時点で退職届を叩きつけていたかもしれない。