『チェンソーマン』にはロマンと恐怖が詰まっている 一気読み必至の面白さを考察

『チェンソーマン』の魅力は物語の振り幅

 さらに世界観にも注目すべきものがある。物語の開始時点で、世界はすでに悪魔の脅威にさらされている。特に、かつて世界中で大量の死者を出した銃の悪魔が、特別な存在であることが、早い段階から匂わされている。悪魔が人間の恐怖によって力を得るため、世界的に銃が規制されているという設定も面白い。銃の悪魔との対決はどうなるのか。デンジが悪魔に狙われる理由は何か。ふたつの重要ポイントと、次々と繰り広げられるバトルで、ページを繰る手が止まらない。

 しかしデンジが各国の勢力から狙われる騒動を経た、第9巻でストーリーは急展開。「週刊少年ジャンプ」での連載は終わったが、単行本派の人もいると思うので、詳細は省く。ただ、ハードな変身ヒーローの物語は、見事な結末を迎えたとだけいっておこう。寄り道はないが、曲折のあるストーリーは、一気読み必至の面白さなのだ。

 なお、「週刊少年ジャンプ」連載分は「公安編」であり、これから「少年ジャンプ+」で第二部を開始するとのこと。また、テレビアニメ化も発表された。まだまだ『チェンソーマン』の世界を楽しめそうだ。嬉しいことである。

■細谷正充
1963年、埼玉県生まれ。文芸評論家。歴史時代小説、ミステリーなどのエンターテインメント作品を中心に、書評、解説を数多く執筆している。アンソロジーの編者としての著書も多い。主な編著書に『歴史・時代小説の快楽 読まなきゃ死ねない全100作ガイド』『井伊の赤備え 徳川四天王筆頭史譚』『名刀伝』『名刀伝(二)』『名城伝』などがある。

■書籍情報
『チェンソーマン』単行本・既刊9巻
著者:藤本タツキ
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/chainsaw.html

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