『僕のヒーローアカデミア』爆豪はなぜヴィランにならなかったのか? デクとの関係から考察

『僕のヒーローアカデミア』爆豪はなぜヴィランにならなかったのか? デクとの関係から考察

 『週刊少年ジャンプ』で2014年より連載中の堀越耕平『僕のヒーローアカデミア(以下、ヒロアカ)』。アニメ化のほか、2019年に『僕のヒーローアカデミア The“Ultra”Stage』として舞台化もされている。

『僕のヒーローアカデミア』7巻

 爆豪勝己は主人公の緑谷出久、通称“デク”の幼なじみだ。ヒーロー育成の名門校、雄英高校ヒーロー科1年A組のクラスメイトでもある。無個性だったデクに対し、「爆破」の個性を持つ爆豪。「なんでも『やれば出来てしまう』タイプでガキ大将の乱暴者」とデクが評している通り、頭も良く何かと目立つ存在だった。

 性格は粗暴で、攻撃的。その言動はヒーローどころかどちらかと言えば、ヴィランでは? とも思える。無個性にも関わらず、自分を気遣い、対等であろうとするデクは、爆豪にとってはイジメの対象でもあった。それが、雄英高校に入学し、本格的にヒーローへの道を歩み始めてから少しずつ変化が生まれてくる。

目指すのは完全無欠のヒーロー

 「どれだけピンチでも絶対に最後には勝つ」。これが爆豪の憧れるヒーロー像であり、その頂点がオールマイトだった。

 そんな爆豪の特徴のひとつとして挙げられるのが自尊心の高さだ。高校入学前にヴィランに襲われた爆豪。そこにまだ無個性だったころのデクが助けようと飛び込んできた。そんなデクに感動……するような男ではない。

「てめェに助けを求めてなんかねえぞ……!」
「無個性の出来損ないが見下すんじゃねえぞ 恩売ろうってか!? 見下すなよ 俺を!!」

 感情的にまくしたてられる言葉に込められた怒り。「見下すな」という言葉は2度も放たれており、爆豪の性格を端的にあらわしているセリフのひとつとも言えるだろう。どれだけ嫌なんだ。

 入学後もデクと同じクラスになった爆豪は不機嫌だ。無個性だと自分が「見下していた」デクに個性があったことに驚き、隠されていたと感じて気に入らなかった。

「俺を騙してたんだろォ!? 楽しかったか ずっとぉ!!」

 入学後の授業で行われた2対2の屋内戦。デクのチームと対戦することになった爆豪は、他の人を構わずひたすらデクだけを追い詰めていく。下だと思っていた奴に“隠されていた”ことが許せない。自尊心が肥大化した爆豪は周囲が見えなくなっていく。

ヴィランに「つけ込む隙」であると思われた爆豪の精神面

 爆豪は強い。しかし、その自尊心の高さや、粗暴な面などはヒーローの素質としてはいかがなものかと疑問がわく。とはいえ、強いヒーローになれる可能性はあるのだから、雄英高校の教師陣がそれを放っておくはずがない。特にオールマイトは爆豪を見極めていた。初めての期末テスト演習試験では、「変に仲が悪いから」という理由でデクとチームを組むことに。当然のことながら、危機にあっても協力しようとはしない爆豪。

「(デクの力を)借りるくらいなら負けた方がマシだ」

 その言葉を聞いてデクは爆豪に殴り掛かる。「勝つのを諦めないのが君じゃないか」。デクに対しては熱く、ムキになりやすい爆豪だが、冷静さを取り戻したのもデクの言葉によってだった。2人を分けず、衝突させた教師たちの目論見が正解だったと言える。

 だからと言って、すぐにその性格に変化が現れるわけではない。体育祭で優勝し、その模様が生放送でテレビオンエアされるが、粗暴さや表彰式での暴れっぷりにも注目が集まってしまう。そんな中での林間合宿。そこでヴィランの襲撃に遭い、爆豪は拉致されてしまう。ヴィランの拉致の対象は、雄英の生徒だったら誰でもよかったわけではない。

 死柄木は「これはスカウトだ」と爆豪を対象とした。「ヴィランもヒーローも表裏一体」。ヒーローがヴィランになることだってあり得る。だからこそ、死柄木は爆豪を誘ったのだ。しかし、爆豪は揺れることなく突っぱねる。

「俺はオールマイトが勝つ姿に憧れた」
「誰が何言ってこようがそこァもう曲がらねえ」

 なりたい将来像がある。その姿を間近で見ている。それを覆すだけの理由がヴィラン側にはなかった。

 爆豪は「誰よりもトップヒーローを追い求めあがいている」のだ。ヴィランが「隙」だと勘違いしたものは、苦しみ、壁にぶつかりながらも成長している爆豪の不器用な姿だったのだ。

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