和食の天才、銀座一の寿司職人、中華の達人……『美味しんぼ』山岡士郎が認めた一流料理人たち

『美味しんぼ』山岡士郎が認めた料理人

中華の達人、周大人

 山岡が中華料理の分野で絶大な信頼を寄せるのが、周大人である。山岡と栗田、田畑と花村が横浜中華街で食事をしていた際、提供されたトンポーローを「出来損ないで食べられない」と山岡が一喝し、店主と喧嘩になったことがある。

 その時包丁を持って暴れる中国人の料理人を止めたのが、周大人だった。そのとき「私は周懐徳といいます」と名乗っている。その後、山岡と料理人の豚バラ煮込み対決を行うことになり、周大人の広大な屋敷に4人が招かれた。

 対決は公正に執り行われ、周夫妻の判定で山岡の勝ち。その後「究極のメニュー」について語り合うことになり、山岡はなにかと周大人の力を借りることに。また、周大人も行方不明になっていた娘とお抱え料理人の結婚などで、協力を仰いだ。

 周大人はかなり強い力を持っているようで、中国から国家副主席が来日した際には「ハナタレ坊主」と笑っている。また、この回で対面した海原雄山も、一目置いていた。(2巻より)

 この周大人だが、モデルは中華料理店店主でバラエティ番組にもたびたび出演した周富徳氏であると見られている。

「鯛ふじ」の大不二

『美味しんぼ』(2巻)

 和食料理人になりたいと東西新聞社を訪れたジェフ・ラーソン。谷村部長の計らいで日本料理店に連れて行くと、その店の花板が刺し身を切って包丁で魚に乗せ、最終的にいけすのように見せるという演出を見せる。

 ジェフは「この刺身は美味しくない」「この店で働きたくない」と話す。花板と店の経営者は「外国人は味がわからない」とバカにするが、山岡は「俺も感心しなかった。それも魚のせいじゃない」と啖呵を切る。そして、1週間後にジェフの作る刺身で証明してみせると言い放った。

 山岡がそんなジェフを預けたのが、日本橋・箱崎の「鯛ふじ」。主人の大不二は、「山岡さんがそこまでいうなら」と弟子入りを許可する。そして、スーッと引きながら刺身を切ったうえ、大きな氷を包丁で細かく切り刻み、洗いを作ってみせる。ジェフはその技術に感動し、自ら弟子入りを志願した。

 大不二は1本の大根から3メートル以上の大根の帯を作れるようになれば、包丁はどんなにでも使いこなせるようになる」と大根の桂剥きをやってみせる。

 修行したジェフは、1週間後の勝負で、習得した氷を薄く切る技を披露する。彼の作った洗いを「外国人は味がわからない」とバカにしていた経営者も認め、過度な演出の見直しを誓ったのだった(2巻)

 山岡も認める包丁技術を持つ料理店として登場した「鯛ふじ」は実在する名店。多くの人に愛され、2017年に惜しまれつつ閉店したそうだ。

料理人たちの存在も物語のスパイス

 本稿で紹介した以外にも、山岡がその味や技術を信用している人物は数多い。そんな彼らの存在もまた、物語を盛り上げるスパイスとなっているのだろう。 

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