『SLAM DUNK』木暮は“スターではない人間のスター”だ いつか来るかもしれない「その日」を信じ続ける強さ
“Every dog has his day”という言葉がある。「どんな人にも主役になる日がある」という意味のことわざだ。木暮にとって、陵南戦のこの瞬間はまぎれもなく「his day」だっただろう。
中学時代から数えて6年のうちの、たった数十秒。そう考えると途方もないけれど、この日のシュートが決まったのは、それまでの6年、木暮がバスケと向き合い続けてきたからこそだ。
報われるかわからないことのために努力をし続けるのは苦痛だ。自分がスターではないと自覚している人間ならなおさら、「その日」を諦めずにいることは難しい。けれど、山王戦を前に怖気づく赤木、三井にこの言葉を投げかけるのは、誰よりも光の当たらない日々を過ごしてきたはずの木暮だ。
“今まで残ったのは、あの時本気で全国制覇を信じた奴だけだぜ”
いつか、本当にくるのかさえわからない「その日」を信じ続けて、「そうでない日々」を歩き続けられること。それこそが、木暮公延の真の強さであり、私たちが「スターではない」彼に心惹かれる理由なのだろう。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ
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