『SLAM DUNK』は“最後のチャンス”の重みを描くーー藤真、赤木、魚住……上級生たちのドラマ

『SLAM DUNK』上級生たちのドラマ

 どうして高校時代というのは、たった3年間しかないのだろう。

 あまねく部活マンガに言えることだけれど、1〜2年生にとっての試合や大会と3年生にとってのそれでは、様相が大きく異なる。たとえ負けても1〜2年生はその悔しさを来年に活かすことができるが、3年生にとっては「これが最後のチャンス」「負ければ引退」そんな言葉がついてまわる。

 バスケマンガの金字塔『SLAM DUNK』においても、そんな「最後の1年」のドラマをいくつも目撃する。

 まず触れたいのが、インターハイ予選の決勝リーグ進出をかけた湘北対翔陽戦だ。

 前年、神奈川NO.2の翔陽高校、そのエースが3年の藤真健司だ。藤真は強豪校である翔陽の中で、唯一1年からスタメンを勝ち取り続けてきたエリート。だが、神奈川王者の海南大付属に阻まれ続けてきたために、優勝経験は一度もない。藤真、そして翔陽にとって、「打倒海南」は悲願だ。「今年こそオレたちがNO.1だ」「今年こそ翔陽がNo.1になる年だ」――思いの強さを示すように、藤真はそう繰り返す。藤真の眼中にあるのは海南のみ。格下の湘北との試合は、前哨戦に過ぎないはずだった。だが、湘北が翔陽を打ち破ったことで、「打倒」どころか海南との対戦自体の道を断たれることとなる。

 主人公・桜木花道有する湘北にも、もちろん「3年生」の主将・赤木のドラマがある。赤木は屈指の実力とセンターとしての才を持ちながら、チームメイトに恵まれない2年間を過ごしてきた。そんな赤木が切望し続けてきたのもまた、海南大附属との勝負だ。

 三井と宮城の復帰、そして流川と花道という才能ある1年生を迎え、翔陽を破ってついに海南への挑戦権を手にした湘北。試合前、部員を前に赤木は、一年のときからこの日のことを想像していた、と言う。

 しかし、その試合の途中、赤木は足首の痛みで退場。それでも、マネージャーの彩子が止めるのも聞かずに試合に復帰しようとする。

“骨が折れてもいい…歩けなくなってもいい…やっとつかんだチャンスなんだ…‼”

 燻ぶった2年を過ごした赤木が夢見続けた、最初で最後の舞台。自棄にすら見えるそのセリフには、未来のことをかなぐり捨ててでも、今、全力で挑みたい思いがにじみ出る。

 そんな赤木と対比される男がいる。陵南の主将・魚住だ。

 中学時代から県で一番身長の高く、高3の今では202センチの巨体を持つ魚住。だが、身長自体は赤木よりも大きいものの、センターとしてのセンスを認められていたのは赤木の方だった。事実、陵南バスケ部に入ったばかりの魚住は体力もなく、厳しい練習と「でかいだけ」と陰口を叩かれていることに苦しむ。

 そんな魚住に、監督の田岡が与えた言葉がある。

“でかいだけ? 結構じゃないか”
“体力や技術は身につけさすことはできる…だが…お前をでかくすることはできない”
“立派な才能だ”

 そんな田岡が魚住に語ったのは、魚住がチームの中心となる3年生の年に、陵南初の全国大会出場するという「夢」だった。

 インターハイ本選出場、その最後の1枠を賭けて、湘北と陵南はぶつかり合う。比べられ続けた赤木と雌雄を決するため、そして自分自身と田岡の夢も背負い、魚住は試合に臨む。

 だが、激戦の末、全国への最後のチケットを手にしたのは、湘北だった。

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