「死に戻り」とは「告解」であるーー『Re:ゼロから始める異世界生活』のテーマを考察

『Re:ゼロから始める異世界生活』考察

過去に向き合い、内面のミステリーを解く

 『Re:ゼロ』の1章から3章までは死に戻りをしながら事件の謎を解く、世界の謎を解く物語だったが、4章から始まる「試練」ではスバルやエミリアが自らの過去に向き合うことが課され、これまで描かれてこなかった内面の謎に迫っていくことになる。

 1章から3章まではスバルがフーダニット(誰がやったのか?)、ハウダニット(いかにやったのか?)にチャレンジしていくミステリーだったが、4章はそれに加えてある意味でホワイダニット(なぜやったのか?)の物語になっていく。スバルも含めて「このキャラクターはなぜこんなことをする(人間になった)のか」「過去にどんな人間だったのか」を掘り下げ、それぞれのキャラクターの心理の謎を解いていく、内面のミステリーになる。

 来たるべき赦しと救いの日に向けて、罪に向き合い、人間に破滅をもたらす悪しき欲望や恐怖と戦う――『Re:ゼロから始める異世界生活』はそういう物語なのだと思う。

 もちろん、あらゆる誘惑に勝ち、驕ることなく、腐ることなく、恐れることなく生きられる人間などいない。だからスバルは何度でも反省し、罪に、それをもたらす欲望に向き合い、死に戻ってやり直さなければならない。

 4章序盤では、スバルが不登校だった過去と向き合い、異世界転移以前には両親に伝えられなかった言葉を伝える姿が感動的に描かれる。

 『Re:ゼロ』はそうした姿を通じて、死に戻ることはできない読者/視聴者にも、自らを省みる機会を与えてくれる作品でもある。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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