『SLAM DUNK』は“最後のチャンス”の重みを描くーー藤真、赤木、魚住……上級生たちのドラマ
「椅子の数」というものは常に限られている。優勝するのはたった1校だけで、全国に行ける数も決まっている。もっと言えば、試合に出られるメンバーだってそうだ。湘北の木暮も、ずっと赤木と全国を目指してきた3年生だけれど、花道らの加入によってスタメンを外れ、試合のほとんどをベンチで過ごしている。作中に描かれてはいないけれど、3年間練習し続けて、一度も試合に出られなかった選手だって存在するはずだ。
赤木も魚住も藤真も、この「最後の1年」にかける並々ならぬ思いを持っていた。スポットの当たっていない「出られなかった者」にだって、そんな気持ちがあったかもしれない。だが、「思いが強いから」なんて理由で椅子の数が増やされることはない。
『SLAM DUNK』の主役は言うまでもなく桜木花道であり、湘北高校だ。この作品が単に、桜木を、湘北を応援していればいい漫画ならばよかった。けれど、繰り広げられる激戦を読みながら、藤真を海南大附属に勝たせてやりたいと、魚住を全国に行かせてやりたいと、どれほどの人が思ったことだろう。「どっちも勝ってほしい」なんてことを、何度願わされたことだろう。
3年間という時間。たった一つの「優勝」という椅子。限られているからこその尊さを、『SLAM DUNK』は読み返すたびに教えてくれる。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ
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