『進撃の巨人』は団結できない人類の業を描き続けるーー時代が変わっても色あせない魅力
第3巻でピクシス司令はエレンに対して、こんなことを語った。
「巨人に地上を支配される前」
「人類は種族や理の違う者同士で果てのない殺し合いを続けていたと言われておる」
「その時に誰かが言ったそうな」
「もし…人類以外の巨大な敵が現れたら人類は一丸となり争い事をやめるだろうと…」
「お主はどう思うかの?」と問われたエレンは「ずいぶんと呑気ですね…」「欠伸が出ます…」と言った後、「その強大な敵にここまで追い詰められた今でも」「一つになったとは言い難い状況だと思いますので…」と返す。
幾千万の巨人を従えるエレンが人類にとって最強の敵となり、かつては殺し合っていた調査兵団の兵士たちとマーレの戦士たちが同盟を組みエレンを止めようとする現在の展開を観ていると、なんとも皮肉なやりとりだと思う。
巨大な困難を前にしても、団結できない人類の業を描き続けたのが『進撃の巨人』だったことを考えると、彼らの同盟も一筋縄ではいかないのだろうが「今度こそは」と希望を抱いてしまうこともまた人間の業である。ここまで来たのだから、最後まで妥協することなく“絶望”と“その先にある結末”を描ききってほしい。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■書籍情報
『進撃の巨人』(講談社コミックス)既刊31巻
著者:諫山創
出版社:講談社
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