『ジョジョリオン』東方定助のスタンド「ソフト&ウェット」の謎ーーなぜ”奪う”能力なのか?

『ジョジョリオン』東方定助のスタンドの謎

ジョースター家にとって厄介な敵

 しかし、ジョースターの一族は素行の良し悪しはさておき、皆がその胸に「黄金の精神」を宿し、自らの運命に立ち向かい、誇り高く、正しく生きていた。定助も吉良吉影が持つ”ジョジョ”を受け継いでいるので、気づかないうちに黄金の精神をも受け継いでいた。その黄金の精神は「吉良・ホリー・ジョースターを救いたい」という想いに集約される。仗世文として幼少期に命を救われたことに対しての恩義、そして吉良吉影としての母親の対する想いが融合、集約して、黄金の精神に昇華したのではないかと考える。その瞬間、スタンドの”奪う”という能力は「どんな困難や運命が向かっていこうとも、自らの手でその願いを運命からも奪い取る」という強い精神の形となっているのではないだろうか? その強い想いのために、おそらく今回のラスボスと見られる医院長を追いかけて倒すと明言した定助にホリーは「絶対に追いかけるのは駄目よ。追いかけさせるのは良い」と伝える。立ち向かう気持ちがかえって仇となる敵というのは、ある意味ジョースター家にとってやっかいなことこの上ないが、(しかもまだラスボスと決まったわけではない)ホリーを救うという願いは、同時にジョースター家、東方家が苦しむ呪いから解放されるきっかけにも繋がる。

 ジョニィ・ジョースターの行動により始まったジョースター家の呪い、その因縁を断ち切ることこそが「定助がこの世に存在する意味」なのではないだろうか? いずれにしても物語はいよいよクライマックスに向けて加速し始める雰囲気を見せている。どのような結末が訪れるのか、続きを楽しみに待つことにしよう。

■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、漫画、特撮、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。

■書籍情報
『ジョジョリオン(23)』
荒木飛呂彦 著
価格:440円(本体)+税
出版社:集英社
公式サイト

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