「僕の姉ちゃん」シリーズ著者・益田ミリが語る、姉弟の性格 「ちはるの行動力にわたし自身がいつも驚かされている」

益田ミリ「僕の姉ちゃん」シリーズを語る

 イラストレーター・益田ミリ氏の漫画にはドキッとさせられることが多い。シンプルでちょっとゆるい雰囲気のイラストに、キャラクターたちの核心をついたセリフのギャップがあるからだ。でも、そんなセリフが小気味好く、スカッとする。仕事に疲れたとき、ちょっと一休みしたいとき、つい手が伸びる作品が多い。

 3月に発売された新作『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』もそんな作品のひとつだ。週刊誌『anan』で連載されている「僕の姉ちゃん」シリーズの最新刊である本書。読者にはすっかりおなじみの姉・ちはると弟・順平の団らんが描かれている。著者本人は、ふたりのことをどう思い、どう描いているのか、そして執筆の時に手放せない愛用品などについて、益田ミリ氏にメールインタビューで話を訊いた。

自分のことを自分より先に誰かに決められるのっておもしろくない

ーーどのようなきっかけでイラストや漫画の仕事を始めたのか教えてください。

益田:イラストレーターになろうと会社員をやめて上京したのが26歳のときでした。出版社をまわってイラストの売り込みをして、少しずつ仕事をする機会が増えていったんです。最初は料理のカットが多かったです。食材のイラストもよく描きました。掲載号の雑誌が待ち遠しくて、発売日に買って実家に送ってました。イラストから、漫画やエッセイの仕事につながり今に至っていますが、肩書きは最初に名刺を作った「イラストレーター」のままです。

ーー売り込みをするのはとっても勇気がいりますよね。

益田:スマホどころかインターネットもまだ一般的ではなかった頃なので、とにかく仕事をもらうには人に会いに行く方法しかありませんでした。メールに慣れた今のわたしなら尻込みしていると思います(笑)。学生時代にいろんなアルバイトをしていたのでタフだったのかもしれませんね。ドーナツショップとか、お好み焼き屋さんとかで働きました。

ーー益田さんの漫画を読むと、キャラクターのセリフにいつもハッとさせられます。言葉について普段から意識していることはありますか?

益田:思いついたことは、よくスマホにメモしています。あとは、読んだ本の言葉をノートに書き写すこともあります。勉強のためというより、すごい表現だなぁ、素晴らしいなぁと、読み返してうっとりするのが好きなんです。

ーーなるほど。蓄積があるからこそ、キャラクターにピタッとはまるセリフが生み出されるんですね。「僕と姉ちゃん」シリーズもちはるのセリフが抜群ですよね。益田さんにとって、ちはるはどういう存在ですか?

『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』

益田:実は、ちはるの行動力にわたし自身がいつも驚かされているんです。特に恋愛に対する彼女の行動力はハンパないです。たとえば、気になる人をデートに誘ったのに返信がこない、という漫画があるんですね。でも彼女はまったく気にしていません。

 「誘った勇気までがわたしのもので、返信の有無まで知らんがな」

 なんて弟に言ってのけます。描いていて「へぇ~、この女の子、強っ!」と感心してしまいました。本書にはそういう「ちはる語録」が盛りだくさんです。

ーーでは益田さんご自身とちはるは似ていないですか?

『僕の姉ちゃん的生活 明日は明日の甘いもの』

益田:彼女と似ていると感じるところもあるかな。

 「どっちがいい? って聞いてないのに こっちがいいと思うって言う人の 違うほう選びたくなる不思議」

 ちはるのこのセリフにはわたしも同感です。自分のことを自分より先に誰かに決められるのっておもしろくないなと思います。

ーーちはると順平の仲の良さも魅力ですよね。こういう弟がいたらいいなと思います。

益田:「こんな弟がいたらストレス解消になりそう!」と思ってもらえるような弟像を考えました。疲れ果てて家に帰ってきて、自分の胸の内をただ聞いてもらいたい。そんな日のための順平なんです。アドバイスもお説教もしてこない、なんだろう、サボテンのような存在かもしれませんね。わたしには弟はいませんが、この漫画を描いていると「順平」という弟がすでにいるような感じです。

ーーちはるにはモテないと言われていますが、順平はとてもモテる男ではないか……と私は思うのですが。

益田:読んでくださった方それぞれに順平像があるといいなぁと思います。ドラマになったら俳優さんはだれがいい?って話題になったとき、いろんなお名前が出てくるのがわたしの理想です。

ーーなるほど。確かにいろんな俳優さんが順平を演じられるし、演じる人によって全然イメージも変わりそうですね。「僕の姉ちゃん」シリーズを男性に読んで欲しいと思う女性読者も多いと思いますが、益田さんとしてはこんな人に届いたら嬉しいなと思うことはありますか?

益田:「僕の姉ちゃん」は、現在も『anan(アンアン)』で連載中です。わたしが『anan』を一番読んでいたのは会社員時代なのですが、「自分の毎日を少しでもよりよいものにしたい」という前向きな気持ちで手に取っていたなぁって振り返るんです。だから、今はそんな読者のみなさんに向けて描いています。

ーー益田さんが今後挑戦したいことをプライベート・仕事でひとつずつ教えてください。

益田:旅が好きなのですが、旅先でまだ出会ったことがないお菓子を食べたいです。去年はポーランドで「ポンチキ」というドーナツを食べました。バラのジャムが入っているんですよ。そして、これからも描きつづけていられるように体力&筋力をつけたいです。

ーー最後に読者の方に一言お願いします。

益田:最後までインタビューを読んでくださりありがとうございます。お仕事帰りの電車やおやつの時間に、この漫画でくすっと笑っていただければ幸いです。

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