Twitter発の猫マンガ『手から毒がでるねこのはなし』に学ぶ、“どん底な人生の乗り越え方”
また、もうどくをいじめる悪ねこ三兄弟のひとり、ぎがとのエピソードも心に刺さる。実は初め、ぎがともうどくは友達だった。しかし、もうどくがシーツの下を見せてくれなかったことにより、関係は一変。
毛の色がみんなと違う事なんて、とっくに気づいている。そんなことで嫌いになんてならない。それなのに隠すのは、それほど自分との友情を信じておらず、大切にも思っていないからではないのか。そう思ったぎがの心にはドロドロした悪意が募ってしまい、もうどくのことを傷つけるようになってしまったのだ。
しかし、ある日、ぎがは人間から石を投げつけられ、痛みを感じた時に気づく。何も言わないし、泣きもしないから平気だと思っていたけれど、もしかしたらもうどくも、こんな風に痛い思いをしているのかもしれない……と。
私たちは自分の傷には敏感だが、他者の痛みには鈍感だ。誰かに傷つけられて初めて、自分が相手につけてしまった傷の大きさや深さを後悔することも少なくない。では、取り返しのつかない過ちは、どう償えばいいのか。ぎがともうどくのエピソードはそんな問いに答えを授けてくれる。
相手のことを大切に思っていたからこそすれ違い、傷つけ合ってしまった2人の話はぎが目線、もうどく目線に立って考えてみることで全く違った見え方になるのもユニークな点。もどかしいすれ違いを目の当たりにすると、あなたも大切な人との向き合い方を振り返りたくなるはず。
本作は人生に迷った時、人間関係に悩んだ時にそっと開きたくなる漫画形式の処世術本。あなたの中にいる、ぎがやもうどくともぜひ向き合ってみてほしい。
■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。
■書籍情報
『手から毒がでるねこのはなし』
著者:原田ちあき
出版社:エムオン・エンタテインメント
価格:1,400円(本体)
<発売中>
http://www.m-on-books.jp/book/id013687