カロリー制限、低糖質、月曜断食……ベストセラーから紐解く、ダイエット法の進化
日本ではこれまでに数多くのダイエット法が誕生し、一大ブームを築き上げてきた。そこで本稿では、過去に話題となったダイエット法を振り返りながら、女性たちの意識がどう変化していったのかを紐解きつつ、近ごろ注目が集まっている「月曜断食」というダイエット法も紹介していきたい。
2000年代以前のダイエットは「痩せること」重視
日本がダイエットブームに沸き始めたのは、1960年代のこと。きっかけは、スレンダーなイギリスのスーパーモデル・ツイッギーに注目が集まり、ミニスカブームが到来したことだった。ツイッギーの華奢な体型に憧れた女性たちがダイエット意識を強めたからか、1970年代には歌手の弘田三枝子が『ミコのカロリーBOOK』(久我三郎:編/集団形星)を発刊。150万部の大ベストセラーとなった本書は、ダイエット本のパイオニア的存在だ。
1980年には美白の女王として有名だった鈴木その子が『やせたい人は食べなさい―減量常識を破る奇跡の鈴木式』(祥伝社)を刊行。料理研究家でもあった鈴木は、高タンパク・高脂肪のおかずを避けつつ、1日3食ご飯を食べるというダイエットを提案。現代の糖質制限とは真逆の考え方だったが、過激なダイエットが流行っていた当時、鈴木のダイエット法はストレスが溜まりにくく、健康的であったため、書籍がベストセラーとなるほど人々は興味を示した。
しかし、一方で、特定の食材のみを食べたり低カロリーの食材を主食と置き換えたりする過激なダイエットは1990年代になっても続いた。リンゴダイエットやこんにゃくダイエット、ゆで卵ダイエット、黒酢ダイエットなどが、その例だ。だが、バブルが崩壊した後は、お金がかからないダイエットが主流に。常につま先立ちすることで足首やふくらはぎを鍛えつつ痩せる「初恋ダイエットスリッパ」が一大ブームを築いた。
2000年代以前のダイエットを振り返ってみると、健康面は二の次で「体重を落とすこと」に重きを置いたダイエットが多かったことが分かる。そんな無謀なダイエットを繰り返してきた反省が、2000年代以降には活かされるようになっていく。
健康で手軽な方法を求め続ける2000年代のダイエット
人々の意識を大きく変えるきっかけとなったのは2000年代初めに流行った、にがりダイエットだろう。当初、にがりはミネラルが多いため健康によいと言われていたが、次第に健康に好ましくないと囁かれ始めたため、人々の注目は本当に健康的に痩せられるダイエット法に向いていった。
アメリカ軍の新人向け基礎訓練である「ブートキャンプ」をベースにした短期集中型エクササイズ『ビリーズ・ブートキャンプ』が流行ったのには、多少きつくても健康的かつ安全に痩せたいと思う人が多かったからではないだろうか。
だが、健康的に痩せることに重きを置いたきついダイエットは継続しにくい。そこで考案され始めたのが、朝バナナダイエットやサバ缶ダイエットなど健康に配慮した食材を取り入れるダイエット法。そして、健康に痩せられることが当たり前になってくると、痩せるだけでなく+αのメリットが期待できるものに関心が向くようになった。
例えば、きゅうりダイエットはリバウンドのしにくさが注目を集め、糖質制限ダイエット法はストレスフリーで行える点が+α。体を動かすダイエット法は何かをしながら自宅で行える手軽なものが主流となり、これまで「壁」を感じていた方でもチャレンジしやすいものが続々と誕生している。こうしたダイエット法が主流になってきたのは過去に流行った、辛くて不健康なダイエット法では意味がないと多くの人が気づいたからではないだろうか。
流行り廃れの激しいダイエット業界では今後、ライザップのように個々の体質に適した痩せ方を伝授するものが増えていくように思う。みんなにウケるものではなく、「私」に効果があるダイエットによってさらに“ダイエット挑戦”への壁は低くなり、理想の自分も手入りやすくなっていくのではないだろうか。