『ケンガンアシュラ』十鬼蛇王馬の魅力は“ギャップ”にあり? 絶対的王者でありながら憎めないキャラに迫る

『ケンガンアシュラ』十鬼蛇王馬の魅力は“ギャップ”にあり? 絶対的王者でありながら憎めないキャラに迫る

 みなさんは原作サンドロビッチ・ヤバ子、作画だろめおんによる格闘漫画『ケンガンアシュラ』をご存じだろうか? 緻密に計算されたバトルシーンに、細やかな心理描写、そして魅力的なキャラクター造形で人気を博している。すでに2019年にはNetflixでアニメ化され全世界に配信されていたが、2020年1月からはTV放送(TOKYO MX、MBS、BS日テレ)も始まった。

 物語はさえない平社員・山下一夫が大企業・乃木グループの会長・乃木英樹に呼び出され、日本一の企業・闘技者を決める「拳願絶命トーナメント」に参加すると告げられるところから始まる。その参加者として、突如現れた青年「十鬼蛇王馬(ときた・おうま)」。急遽、山下は彼の世話係に任命され、凡庸な生活が一変していくのだった。

 どこにでもいそうな中年サラリーマン山下に対して、王馬は想像の斜め上をいく超人っぷり。ムキムキの肉体も勿論そうだが、この時代に自給自足の生活、そして自分に対する圧倒的な自信……山下とはまるで正反対な王馬の存在が、より山下を凡庸に見せてしまう。『ケンガンアシュラ』の魅力は、そんな真逆な存在である二人の主人公が、目標へ向かって共に奔走する姿。読者はそこからに目が離せなくなるのだ。

王馬が見せるギャップ

 王馬のインパクトは初登場時から凄かった。初登場シーンの繁華街でのケンカを目撃した読者は山下と同じように白熱したのではないだろうか。デカブツを一撃で仕留めたところなどスカッとさせる爽快感もあり、読者の想像する「強い男」像にピタッとハマった。「相手を煽っておいて喧嘩に勝つ」。誰もが一度は夢想するシチュエーションだろう。

 ここまでの説明だと、ただ強いだけの突飛な人物と思うだろうが、作中では生い立ちや野望、彼の心理についても深く描かれていき、その印象はガラリと変わる。戦いのシーンでも心の内で炎を燃やし、「前借り」(自ら心拍数を高め血流を早くし、運動能力を飛躍させる技)によってる自分自身を追い詰めていくファイトスタイルで、見るものをを魅了していくのだ。命を燃やし、何者にも恐れず勝利へと向かっていく姿勢は非常に頼もしい。王馬の自信は決して嫌味たらしいものではなく、彼の残す結果を見れば納得するだろう。「気づけば見るもの全てを引き付けていた」といったところだ。

 阿修羅の異名がつくほど、戦闘中は恐ろしい顔を持つ王馬だが、実はちょっぴり天然な一面が垣間見える時もある。基本的には寡黙で、何を考えているか読めないのだが、無法地帯で育ったせいか、一般常識に疎く、時折不思議な発言が飛び出す。絶対的王者でありながら素の顔には少しばかり隙ものある、憎めないキャラクターなのだ。

 そんなギャップにハートを射貫かれる女性読者も多いことだろう。なんと言っても最初はツンツンしていた乃木英樹の秘書・秋山楓も王馬のことが気になるようになり、嫉妬心を露わにしていたくらいである。

 そんな王馬を心配し駆け寄る山下との信頼関係も注目すべきポイントだ。王馬の強さを、引き立たせてくれる山下の存在だ。このふたりの関係性でバディものとしても楽しめる作品となっている。

 ただ淡々とトーナメントが進んでいくだけのストーリーではなく、二人の主人公の成長と行く先が気になって仕方なくなってくる――手を出せば一気に読破してしまう。 

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