ジャンプ4度目の黄金時代を牽引した『僕のヒーローアカデミア』、キーワードは“継承”
『鬼滅の刃』や『約束のネバーランド』のヒットで、4度目の黄金時代を向かえつつあると言ってもいい『週刊少年ジャンプ』(集英社)だが、その代表が堀越耕平の『僕のヒーローアカデミア』(以下『ヒロアカ』)である。
舞台は世界総人口の約8割が“特異体質”となった超人社会。“超常”=“個性”を悪用した犯罪が増加する中、ヒーローたちは世界を守るために戦っていた。主人公のデクこと緑谷出久は、ヒーローになることを夢見ていたが、彼は個性を持たない“無個性”の少年で、ヒーローになるのは「諦めた方がいい」と医者から言われていた。
しかし、名実共にNo.1のヒーロー・オールマイトと出会ったことで彼の運命は大きく変わっていく。ヴィラン(悪党)に捕まった幼馴染の爆豪勝己を助けるため、考えるよりも先に走り出したデクに感銘を受けたオールマイトは、自身の個性「ワン・フォー・オール」をデクに譲渡し、次世代のヒーローとして育てあげようとする……。
デクはヒーロー育成の名門校・雄英高校に入学しオールマイトの指導の元で成長していくのだが、何より引き込まれるのは、デクとオールマイトの師弟関係だ。
力が衰えつつあったオールマイトは、後継者を探していた。「ワン・フォー・オール」は過去のヒーローたちから聖火のように譲渡されてきた巨大な力だが、今のデクの身体では使いこなせず、力を使う度に大怪我をして動けなくなってしまう。オールマイトの指導で力の制御方法を学んだデクは、少しずつだが、力を使いこなせるようになっていく。一方、デクの通うA組の生徒たちは一人一人が個性を持っている濃いキャラで、群像劇として、とても見応えがある。
堀越は弱さを軸に各キャラクターを掘り下げていく作家だ。最初は個性を持たないデクの存在感が際立っていたが、一見、カッコよくて最強に思える爆豪勝己や轟焦凍といったライバルたちもコンプレックスを抱えており、それぞれに悩みをあることが明らかになっていく。彼らはデクと出会い切磋琢磨することで成長していくのだが、ともすれば説教くさくなりがちな熱いメッセージを、ゲーム的なテンポの良いバトルとストーリーで展開していくので、読んでいて全く飽きない。
物語は雄英高校で仲間たちとヒーローの勉強や試験をおこなう学園パートと、デクたちが見習いとしてヒーローの職場を体験するインターンパートが繰り返され、やがて、ヒーローたちと敵対する犯罪組織「ヴィラン連合」の全貌が明らかになっていく。とにかく物語が豊かで、少年漫画の満漢全席みたいな栄養たっぷりの作品である。