宮下草薙、独自のコミュニケーションに垣間見る“エモい関係” 『宮下草薙の不毛なやりとり』を読む

宮下草薙、独自のコミュニケーションに垣間見る“エモい関係” 『宮下草薙の不毛なやりとり』を読む

 『宮下草薙の不毛なやりとり』を読むと売れっ子草薙は宮下なしには誕生しなかったことがわかる。

 太田プロの養成所で出会ったふたり。笑いのセンスに絶大な自信を持っていた宮下と、高校卒業後に「とりあえず」養成所に入った草薙。養成所の生徒だけで順位を決める合同ライブで草薙はめちゃくちゃ笑いをとって1位になる。自信満々な宮下が初めて負けを認めた瞬間だった。その後、元々ピン芸人志望だった宮下が、解散を繰り返し芸人を辞めようとしていた草薙を引きとめ「宮下草薙」を結成する。

 テレビに出始めた頃は「この子大丈夫かな……?」と草薙のことを厳しい目で見ていたお笑いオタクたちも、何度もカメラの前に立つことで少しずつ、でも確実に成長している姿を目撃していく。場数を踏んだ今、どういったときに笑いが起きるのか、自分がどういった反応を求められているのかきちんと考えて動いている。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「お母さん大好き芸人」では大好きな気持ちが溢れてしまい「お母さんが2000連勤している」と発言して話題になり、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)では悩みを吐露した先輩芸人に向かって「芸人の仕事よりも奥さんを優先すべき」と回答して、視聴者の共感を呼んだ。

 大好きなお母さんの話をするとき、有吉さんに「最近痩せたね」と言われたとき、藤田ニコルちゃんに服を選んでもらったとき、テレビに出はじめた頃の固い表情がほぐれて、笑顔を見せてくれる草薙がだんだんかわいく思えてくる。そして宮下はというと相方の魅力を「不毛なやりとり」を通して引き出していく。

 年に12回ほど解散の危機が訪れるというふたり。まあまあな頻度で諍いがあっても解散という結論にならないのは、このふたりにしか出せない空気感に答えがある。一見噛み合ってないように見える会話は、教室の隅で話している男子学生のようだ。

草薙「ゲームをやりたい。それについてお前がどう思ってるのか知りたい。」
宮下「いや、そりゃゲームはやりたいけど、もう時間も時間だし。明日結構早いよ?」
草薙「まぁでも良かった。そっちにゲームをやりたい気持ちがあるならそれは。」
宮下「そう。まぁでも早いからさ明日。」
草薙「聞けて良かったわ。お互いの気持ちが一致してるっていうのは大事だし。」
宮下「そこはな。でもどうしてももう遅いしさ。明日早いから寝ないとな部分がね。」
草薙「お前がゲームをやりたくなかったらそれは向かう場所が一致してないってことだから。いいことが聞けたと思うわ。」
宮下「そろそろ明日早いという部分に触れろ。」

 決してカースト上位ではない人間にしかできないやりとりがだんだんとクセになってくる。こんなのいつまでも聞いていたくなるじゃないか。

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