『五等分の花嫁』はラブコメ界に新しい風を吹かせたーーほのぼのとした“HAPPY ENDING”に寄せて

『五等分の花嫁』最終回に寄せて

作中の空気感が丸ごと「可愛い」

  『週刊少年マガジン』にて2017年より連載された『五等分の花嫁』が、2020年2月19日発売号で最終回を迎えた。アニメ2期の制作が決定されるほどの人気ぶりで、完結を惜しむ声も多く寄せられたことだろう。近頃の漫画では約2年半という短い連載期間だったが、ラブコメ界に新しい風を吹かせてくれる作品だった。

 ざっくりと物語を説明すると、主人公の風太郎が成績の悪い五つ子の女子の家庭教師となり、彼女らを卒業に導くため奮闘するというストーリー。最初はバイト代のためだけと割り切っていた風太郎も、徐々に心を開いていく彼女たちと接近し、絆が深まっていくのだ。

 このシチュエーションだけを見ていると“よくあるラブコメ”でしかないが、この作品は王道ながら新鮮さを感じさせる部分がある。双子や姉妹、五つ子といった萌え要素に、定番の家庭教師というシチュエーションだが、とにかくギャグシーンが豊富。風太郎や五つ子の冷静なツッコミがクスリと笑え、非常にテンポの良い作品となっている。

 ベタベタに甘すぎる展開へ持って行かないのも読者の心を掴む秘訣だろう。どこかほのぼのとした雰囲気が常に流れており、「可愛らしさ」が溢れるのも魅力の一つ。登場する女性キャラがキュートなのは当たり前だが、作中の空気感が丸ごと「可愛い」と思える少年誌ラブコメは、なかなか見当たらないのではないだろうか?

 加えて、女性読者にとって少し抵抗のありそうなセクシーなシーンも比較的少ない。露骨すぎる露出やパンチラはなく、事故で押し倒してしまったーーなんて場面も、どこかカラッとしている印象。エロすぎず、かといってサービスシーンがないわけでもない。男女共に人気を集める理由は、ちょうど良いさじ加減にあるのかもしれない。

 そして何より、主人公のキャラがハッキリと立っているのも魅力の一つ。大抵のラブコメは主人公がごくごく平凡であり、特徴のないことがお約束のパターンとなっていることが多い。「一体、女性キャラはこの主人公のどこに魅力を感じたんだ?」と疑問に思ってしまうこともあるはずだ。風太郎の場合は、そういった王道のキャラクター設定からはやや外れている。頭はいいがコミュニケーションが苦手、陰キャ気質だけど努力家、そして妹想い……という現実にいそうな、親近感を覚える男性。人間味があるため、「この主人公になら惹かれるかも」と説得力を持たせてくれる存在だ。ちょっぴり鈍感なのが玉にキズだが、個性溢れる五つ子と風太郎の存在がうまくマッチしているのも読んでいて面白いポイントだ。

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