『鬼滅の刃』炎柱・煉獄杏寿郎が炭治郎らに示した道ーー第188話、蛇柱・伊黒の過去を読んで
『鬼滅の刃』第188話(『週刊少年ジャンプ』2020年3月号)では、前話までの炭治郎の回想とはうってかわり、柱たちと無惨との戦闘が描かれ、蛇柱・伊黒小芭内の出自に焦点が当てられた。(以降、ネタバレあり)
無惨との戦闘中、恋柱・甘露寺蜜璃は大ダメージをくらい、伊黒は甘露寺を愈史郎のもとへ退避させることを提案。だが、伊黒を慕う甘露寺は、自分のために伊黒が犠牲になるのを拒もうとする。そんななか、伊黒の胸中が語られ、「甘露寺と何気ない日常で出会うことができていたらどんなに良かっただろう」と夢想するも、伊黒は自分の汚れた出自を呪い、一度死んでからでないと甘露寺の傍にすらいられないと自らを責める。
伊黒の一族は、蛇鬼が人を殺して奪った金品で生計を立てていた。その代わりに、一族の女たちは、自分たちの生んだ赤ん坊を生け贄として捧げていた。伊黒は男で風変わりな目をしていたため、蛇鬼に大層気に入られ、成長して喰える部分が増えるまで生かされていたのだった。伊黒は、肉の代わりに血を捧げつづけるため、一族に軟禁された状態で育ったのだ。ある日、軟禁状態から逃れ、蛇鬼に襲撃されそうなところを、すんでの所で当時の炎柱に救われた。伊黒は自分が逃げたせいで一族の五十人が殺されたことを知り、やり場のない思いを全て鬼に向けてきた……。
ここで炎柱のエピソードが出てきたので、改めて煉獄杏寿郎の魅力を振り返りたい(なお、伊黒が助けられた炎柱が誰だったのかは、現時点では不明である)。
杏寿郎の活躍は、無限列車のエピソードにて描かれる。彼は人一倍面倒見が良い一面があり隊士たちの兄貴分のような存在。たとえば、無限列車のエピソードでは、炭治郎が下弦の壱・魘夢との闘いで痛手を負ったのち、全集中からの止血方法を具体的にアドバイスした。全集中の常中をもとに、体の隅々まで神経を行き渡らせ、破れた血管に焦点を当て、出血を止めるといった具合にだ。アドバイスのなかで印象的な台詞が、「呼吸を極めれば様々なことができるようになる 何でもできるわけではないが 昨日の自分より確実に強い自分になれる」だ。