GLIM SPANKY、さらなる飛躍への幕開け メジャーデビュー10周年記念ライブで確かめた成長の道程

GLIM SPANKY、メジャー10周年ライブレポ

 今年6月にメジャーデビュー10周年を迎えたGLIM SPANKYが、それを記念したツアー『GLIM SPANKY 10th Anniversary』を開催。8月30日に東京・Zepp Shinjuku(Tokyo)にてファイナル公演を行った。東名阪の3会場で行われた本ツアーはすべてソールドアウト。この日は台風10号による交通機関の乱れなどがあったものの、彼らにとって初会場となるZepp Shinjukuには、たくさんのオーディエンスが詰めかけていた。

 本ツアーはお馴染みのサポートメンバーである栗原大(Ba)、ゴメスこと中込陽大(Key)に加え、これまで何度かサポートを務めたことのある(2016年のミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』では、表題曲以外のすべてのレコーディングに参加した)福田洋子(Dr)を率いての5人編成。客電が落ち、真っ暗になったステージに差し込む一筋のスポットライトの下、赤いリッケンバッカーギターを抱えた松尾レミ(Vo/Gt)が〈雨は止み 夜が来る/コンクリートは脈を打つ〉と歌い出す。アニバーサリーライブのスタートはもちろん、メジャーデビュー第1弾となったミニアルバム『焦燥』の表題曲だ。松尾のシャウトに導かれ、福田の力強いフィルを合図にバンドが一斉に入ると、早くも会場は熱気に包まれる。間髪入れずに繰り出したのは、栗原の歪んだベースリフに亀本寛貴(Gt)のファズギターが絡む「FLOWER SONG」。メジャーデビューの前年にリリースされた、彼らにとって初の全国流通盤『MUSIC FREAK』に収録された楽曲だ。

GLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)
松尾レミ(Vo/Gt)

 「台風のなか、来てくれてありがとう。最高の夜にしよう、よろしく!」そう松尾が叫び、1stシングル曲「褒めろよ」へ。宙を切り裂くような松尾のハイトーンボイスがサビを歌い上げ、それに応えるようにオーディエンスが拳を高く突き上げる。ラストのサビ前の掛け合いコーラスでは自然発生的にシンガロングが巻き起こり、Zepp Shinjukuは最初のピークを迎えた。

GLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)
亀本寛貴(Gt)

 「みんなと会えてとても嬉しいです。ツアーファイナルだけど、とても新鮮な気持ちです」と松尾があらためて挨拶。ヒートアップした会場の熱をクールダウンさせるように演奏されたのは、ヘヴィなミドルチューン「闇に目を凝らせば」だ。湊かなえ原作、三島有紀子監督による映画『少女』のために書き下ろされ、メジャーからの2ndアルバム『Next One』(2016年)に収録されたこの曲は、松尾のアカペラから始まる。アイリッシュフォークの香り漂うメロディが、ミニマルなバンドアンサンブルの上を這うように進んでいく。ひねりの効いたコード進行とブルージーなフロウはまるでジョン・レノンの初期ソロ作のよう。激渋だが、個人的には彼らのレパートリーのなかで1、2を争うくらい好きな曲だ。

GLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)

 回るミラーボールの下で演奏された「レイトショー」は、激しく転調を繰り返すコード進行の上で、抑揚たっぷりのメロディが舞い踊る。レイドバックしたHIPHOPビートが、次の瞬間にはスウィングするなどプログレッシヴな構成もユニークだ。ギターリフが鳴り始めた途端に歓声が上がったのは、「いざメキシコへ」。ベックの「Devils Haircut」をも彷彿とさせるローファイ感と、歌い出しの〈いざメキシコへ ギンズバーグの詩に倣って〉の言葉の響き、そして松尾と中込のオクターブユニゾンがたまらなく気持ちいい。抑揚を抑えた演奏が進むんでいくにつれ、じわじわと熱を帯びていくと会場は再び熱狂に包まれた。

GLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)

 「今回はGLIM SPANKY結成史上初のアニバーサリーライブです。私が高校生の時にこのバンドを始めてからかれこれ17年、こんなに長くやっていると『何周年とか関係ない』なんてずっと思っていました」と松尾。「でも、今日初めて来てくれた人も、昔から来てくれている人も、みんなGLIM SPANKYの10年の歴史のなかにいるわけだよね。そんなことを考えながら、このツアーを回ってきました」――アニバーサリーを音楽仲間たち(松尾はファンをそう呼ぶ)と分かち合う喜びをそう語ったあと、現在ベストアルバムを制作中であることを明かし、オーディエンスから熱い拍手が送られる。

「ベストアルバムと言っても、気持ちの上では新しいアルバムです。既存曲も入ってるけど、新曲もたくさん入っているので楽しみにしていてください」

GLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)

GLIM SPANKY(撮影=上飯坂一)

 ライブ中盤は「ダミーロックとブルース」「Breaking Down Blues」、そして福田のドラミングに思わず目が釘付けになってしまった「怒りをくれよ」と畳み掛けたあと、ステージはアコースティックギターを抱えた松尾と亀本のふたりだけに。高校時代、風邪を引いて学校を休んだ時に、ガルシア・ロルカの詩集を読みながら作ったという、その名も「ロルカ」を披露。さらに高校卒業間際、故郷である長野を出て上京する決意をした時の“ドキドキとワクワクが入り混じった気持ち”を綴った「さよなら僕の町」を演奏した。再びバンド編成となり、松尾が大学時代“まだ下北沢の駅が地上にあった頃”に書いたという「夜風の街」を披露するなど、GLIM SPANKYがどのように生まれ、成長していったかをオーディエンスと確認するひとときとなった。

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