GLIM SPANKY、クリエイティブを凝縮した特別な場所 『Velvet Theater 2023』レポート

GLIM SPANKY『Velvet Theater 2023』レポ

 GLIM SPANKYの持つ幻想的な側面を全面に打ち出し、通常のライブよりもディープでサイケディックな世界を展開する恒例の自主企画イベント『Velvet Theater 2023』が行われた。8月5日に東京・恵比寿ガーデンホール、11月5日に大阪・味園ユニバース、9日に愛知・DIAMOND HALLにて開催された。

GLIM SPANKY 『Velvet Theater 2023』 撮影=上飯坂一

 『Velvet Theater』が開催されるのは、前回からおよそ5年ぶりの通算4回目。見どころのひとつである、大場雄一郎率いる「チームOverLightShow ~大箱屋~」のリキッドライトショーは今年も導入され、着色したリキッド(油滴やゲル)をプロジェクターの光に通して生み出す動的かつ色彩豊かな表現と、緻密なCGやコラージュを駆使したVJ映像との組み合わせにより摩訶不思議なサイケデリアを展開していた。

GLIM SPANKY 『Velvet Theater 2023』 撮影=上飯坂一

 筆者が観たのは8月5日の東京公演。客電が落ち、マーブル模様に彩られたスポットライトがアコギを抱えた松尾レミ(Vo/Gt)を闇のなかから照らし出し、まずはこのイベントのテーマソングと言っても過言ではない、その名も「Velvet Theater」からこの日のライブはスタート。やがてバンドアンサンブルが松尾の弾き語りを優しく包み込み、赤を基調としたリキッドライトがステージ後方のスクリーンに大きく映し出される。まるで未知の有機体が細胞分裂を繰り返しているような、蠢くその模様に目が釘づけになった。

 「こんばんは、GLIM SPANKYです。『Velvet Theater』へようこそ!」と。松尾がフロアに向かって大きな声で挨拶をすると、どよめきにも似た歓声が上がった。まるでサーカス小屋のメリーゴーランドのように、弾むリズムの上で目まぐるしく転調を繰り返す「レイトショーへと」は、地声とファルセットを巧みに使い分けながら、抑揚たっぷりのメロディを歌い上げる松尾の姿が印象的だ。

 ギターをシタールの音色に模した、サイケデリックなラーガロック「NIGHT LAN DOT」を経て「MIDNIGHT CIRCUS」では、サーカス団が真夜中の砂漠を行進する映像(個人的にはアルチュール・ランボーにインスパイアされた、「サントリー ローヤル」の1980年代のCMを毎回思い出す)に、リキッドライトショーをオーバーラップさせた演出が、ストーリー仕立てのこの楽曲をまるで一本の短編映画のように彩っていく。松尾のアカペラから始まる「闇に目を凝らせば」は、中期ビートルズやレディオヘッドあたりを彷彿とさせるヘヴィかつミニマルなアンサンブルが印象的。クラゲの群れを思わせるリキッドライトの映像により、海の底深くへと沈んでいくような気分を味わった。

GLIM SPANKY 『Velvet Theater 2023』 撮影=上飯坂一

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