小山田壮平が作り出す、スリリングでハッピーな空気 バンドツアーセミファイナル公演

小山田壮平バンドツアーファイナルレポ

 1月にリリースされた2ndアルバム『時をかけるメロディー』を携えての『小山田壮平バンドツアー2024』。5月30日にZepp DiverCity(TOKYO)で行われたセミファイナルにあたる東京公演はチケットソールドアウトの超満員だ。 藤原寛(Ba)、久富奈良(Dr)というお馴染みのバンドメンバーに加え、今回のツアーのギタリストは岡愛子。『時をかけるメロディー』に収録された「スライディングギター」からライブを始めた。気持ち良くアンサンブルがドライブしていく。

 小山田壮平が楽し気な声でバンドメンバーを紹介した後、藤原が「ボーカル&ギター、小山田壮平!」と言うと、小山田は片足を上げおどけた仕草で応えた。「最後まで楽しんでください」と言った後、場内は一気に沖縄の空気で染め上げられた。「月光荘」だ。音源と比べ、よりグルーヴ感が強調されたようなアンサンブルになっており、約2カ月弱の間、全国を回ってきたことでバンドに脂が乗っていることがひしひしと伝わる。小山田の歌もとても伸びやかだ。

 小山田の勇猛な歌がZepp DiverCityを掌握した「彼女のジャズマスター」を経て、岡のギターストロークからandymoriの楽曲「Life Is Party」へ。リリースされてから15年。この日の「Life Is Party」もまたこれまでにないフレッシュさがあった。岡がぐいぐいとギターをドライブさせ、かなりロックンロールなアレンジに。そして小山田がアコギを爪弾き、〈なんでもない日を〉と歌いだすと、フロアから歓声が上がった。言わずもがな、andymoriの不朽の名曲「16」だ。オーディエンスは固唾を呑むように歌とメロディと言葉に耳を傾けた。

 小山田が岡との出会いを話し始めた。小山田はandymori、岡はBAND Aとして活動していた15年前に渋谷で出会い、同じ歳の1984年生まれだという。小山田と岡の間に懐かしいムードが漂う中、小山田が「1984年生まれの藤原寛さんから始まるこの曲を」と言って演奏されたのは、自らの生まれ年を冠した「1984」(andymori)。小山田のブルースハープがノスタルジックに響く。曲が終わり、大きな歓声が上がった。一転、カラフルなネオンがハッピーなムードを生み出す中、「恋はマーブルの海へ」を披露。andymoriの楽曲もソロの楽曲も、稀代のソングライター、小山田壮平の楽曲は息を呑むほどに美しいメロディと瑞々しい情感に最上の永遠と刹那が宿る。その輝きはやはり唯一無二だ。

 小山田がおもむろに「風の噂で聞いたんですけど、愛子さんはインドにいきたいんですか?」と岡に尋ねたことを皮切りに、インドにまつわる話が展開された。小山田が両手を思いっきり広げながら、「インドはこういうふわっとした感じです」ととても抽象的な例えをし、笑いが起こった。「19歳の時にインドに行った時、いろいろなゲストハウスを回る中で、自転車で30キロの道を漕ぎ、コナーラク(のスーリヤ)寺院に向かった」という小山田のエピソードの後、19歳の時から原型があったという「コナーラクへ」が披露された。雄大でどこかワクワク感が宿るメロディと歌に、埃の中、19歳の小山田が期待を胸に自転車のペダルを漕ぐ姿が鮮明に浮かんだ。

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