小山田壮平の歌声が持つ瑞々しさ andymoriとソロ名義曲織り交ぜた恒例弾き語りツアー
2016年から開催されている小山田壮平の弾き語りツアー。今年も無事開催され、Radioheadの「No Surprises」がBGMとして流れる恵比寿The Garden Hallに登場した小山田は、ステージに置いてあったアコギを手にし、リラックスした雰囲気の中、「こんばんは。小山田壮平です」と言って、「君の愛する歌」からライブはスタートした。
andymoriのボーカル&ギターとして音楽シーンに鮮烈な衝撃を与えてから約15年、声の少年性が全く衰えないのがすごい。〈君の愛する歌を歌いたい 誰かと誰かが結ばれたとき 世界中を包み込むように 君の愛する歌を歌いたい〉。東京から福岡に移住するタイミングで曲のイメージが浮かんだという「君の愛する歌」は、3年半前にリリースされた1stソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』を象徴する、穏やかでシンプルな強い気持ちがそのまま歌になったような楽曲だ。
続いては、andymoriのラストアルバム『宇宙の果てはこの目の前に』に収録されている「空は藍色」。ライブで何十回聴いたかわからない楽曲だが、この日もまた新しい表情をした「空は藍色」だった。小山田の歌はandymori時代からずっと、ライブの度に新たな表情を見せる。そのフレッシュな魅力もずっと変わらない。
何曲か披露しては、とても近い距離感でオーディエンスに何度も話しかける小山田。「1歳の子どもがいるから、普段家でべろべろになるわけにはいかないので、ツアーに出ると飲みまくってしまう」と話し、地方の知らない飲み屋に飛び込んでいくのが好きで、先日訪れた島根県では“歌って踊れるラーメン居酒屋”という情報が渋滞気味の店に飛び込み、見た目はやんちゃそうだがシャイでなかなか歌わない若者7~8人を前に中島みゆきの「ファイト!」を歌い、最終的には若者たちと肩を組んでRADWIMPSの「いいんですか?」をデュエットしたという話を楽しそうにする。オーディエンスはまるで久しぶりに会った友人の思い出話に耳を傾けるかのようなムードで小山田の話を聞く。この光景もまた、『小山田壮平弾き語りツアー』の風物詩のひとつだ。
いつものようにandymoriの楽曲もソロ名義の楽曲も何の分け隔てもなく披露していく。「Sunrise&Sunset」で、〈嘘つきは死なない〉〈争いは止まない〉〈欲しいものは尽きない〉〈悲しみは消えない〉と歌った小山田。2011年に初めてこの曲を聴いた時に感じたリアリティと、それから12年後の2023年にこの曲を聴いた時に感じるリアリティは決して変わらない。むしろ、さらなる確信を持って響いているように聴こえた。