ノエル&リアム、ギャラガー兄弟の充実したコラボ歴 Oasis 30周年イヤーに“集結”するか

 年始にリリースされた新曲たちを何気なく聴き流していたら、The Stone Rosesを彷彿とさせる(というかほぼそのまま)なサイケデリックロックが流れてきて、「おぉ!」と思っていたらリアム・ギャラガーの歌声が聴こえてきたので、ひっくり返りそうになってしまった。The Stone Rosesの名前が出てきたのも当たり前の話で、1月5日にリリースされた「Just Another Rainbow」はリアム・ギャラガーとジョン・スクワイアのコラボレーションによって生まれた楽曲である。

Liam Gallagher & John Squire - Just Another Rainbow (Official Lyric Video)

 ブルージーな空気を纏いながら縦横無尽にうねるジョン・スクワイアのサイケデリックなグルーヴの中で、リアム・ギャラガーが唯一無二の堂々たる歌声でそのサウンドスケープをどこまでも拡大していく「Just Another Rainbow」は、まさに「リアムとジョン・スクワイアのコラボ」と聞いてファンが夢想するようなサウンドが実際に繰り広げられる快作だ。後半に待ち構えるジョン・スクワイアのソロも格別で、5分36分という楽曲の長さもまったく気にならない、むしろライブではもっと長くてもいいぞ! と言いたくなるくらいである。

 両者の繋がりは1996年に開催されたOasisの伝説的なネブワース公演での共演に遡るわけだが、今回のコラボレーションの大きなきっかけとなったのが、2022年にリアム・ギャラガーがソロミュージシャンとして再び同会場に帰還した際に、当時と同じようにジョン・スクワイアを交えて披露された「Champagne Supernova」であることは想像に難くない。

Liam Gallagher - Champagne Supernova (Live From Knebworth 22)

 もちろん、Oasis時代からこうした(自身がリスペクトしてやまない)先輩ミュージシャンとの共演がなかったわけではない。だが、近年のリアム・ギャラガーの活動に感じられる、どこか憑き物が落ちたかのようにすら思えるくらいの風通しの良さの要因の一つとして、こうしたコラボレーションを当時よりも積極的に行なうようになったことも挙げられるのではないだろうか。

 さて、実はこうしたオープンなムードは、リアムだけではなく今のノエル・ギャラガーとも共振するものだったりする。そこで本稿では、ギャラガー兄弟のソロ活動におけるコラボレーションの歴史を辿ってみたい。

盟友からかつてのライバルまで ノエル・ギャラガーのコラボ歴

 「ノエル・ギャラガーとミュージシャンの共演」といえば、まず最初に触れなければならないのはポール・ウェラーだろう。自身にとって大きな影響源の一つであると同時に、Oasis時代から深い交友を重ねていたポールは、もはやノエルにとっての最も重要な先輩、あるいは盟友のような存在となっており、Apple Musicのラーズ・ウルリッヒ(Metallica)とのインタビューでは「1979年からずっと、(ポールは)僕の人生における普遍的な存在なんだ」と語るほどだ。

 ソロ活動以降は両者の音楽的な交流もより活発になり、幾度となくライブで共演したり、楽曲を共作するようになった。2017年にリリースされたNoel Gallagher's High Flying Birdsの「Holy Mountain」(ポールはオルガンで参加)も名曲だが、2016年に両者が共作して書き下ろしたThe Monkeesの「Birth Of An Accidental Hipster」は(曲名からも感じられるであろう)皮肉めいたユーモアから60年代へのリスペクトまで、隅々まで両者の魅力が詰まった快作である。

 ところでポール・ウェラーとノエルといえば、2013年にUKロック好きを騒がせたのが、両名がデーモン・アルバーン&グレアム・コクソンのライブ(『Teenage Cancer Trust』)にゲスト出演して披露されたBlur「Tender」のパフォーマンスである(ノエルはギター、ポールはドラムを担当した)。90年代のUKロックシーンにおける象徴的なライバルだったOasisとBlurが約20年の時を経て、(部分的にではあるが)共演するにまで至ったのだ。

 さらに2017年にはGorillazの「We Got The Power」にノエルがバックボーカルとして参加。デーモン・アルバーンとノエルの関係性が、決してあの日限りのサプライズではないということを音源を通して証明したのである(しかも揃ってテレビ出演までしている)。かつての最強のライバルは、今では同じ時代を生き抜いた同志になった。

Gorillaz - We Got The Power / LIVE with Noel Gallagher & Jehnny Beth on The Graham Norton Show

 そんなノエルの現時点での最新作となる『Council Skies』(2022年)では、ポール・ウェラーと同様に自身がリスペクトしてやまない先輩ミュージシャンの一人であるジョニー・マーがなんと3曲(「Pretty Boy」「Open the Door, See What You Find」「Council Skies」)に参加していることも大きな話題となった。過去の作品でもアルバムに1曲というペースで共演していたジョニーだが、同作における大々的なフィーチャーぶりは、彼が奏でるギターサウンドもまた自身の音楽性の一部であるという、今のノエルの考え方を示しているのかもしれない。

 また、同作といえば注目したいのがボーナスディスクに収録されたリミックス楽曲である。Pet Shop Boysが大胆に再構築した「Think Of A Number (Pet Shop Boys Magic Eye 12" Remix)」も相当に衝撃的だったが、やはり多くのファンを驚かせたのはロバート・スミス(The Cure)が担当した「Pretty Boy (Robert Smith Remix)」だろう(ドラムもジェイソン・クーパーが演奏している)。だが、誰より驚いたのは、初めて「Boys Don't Cry」を聴いた時からThe Cureの大ファンだったと語り、依頼するにあたってメールの本文を「やあ、ロバート。ノエル・ギャラガーです。(“Hi Robert, it’s Noel Gallagher.”)」から書き始めたノエル自身かもしれない(リミックスを手掛ける以前まで両氏は直接会ったことはなかったようだ)。結果として、同リミックスは部分的ではありつつも、OasisとThe SmithsとThe Cureが一つの楽曲に集結しているという、90年代のUKロックファンが知ったら卒倒するような代物となっている。そんな大事件がカジュアルに実現できてしまうのも、今のノエルの充実したムードを象徴しているといえるだろう。

Noel Gallagher's High Flying Birds - Pretty Boy (Robert Smith Remix) (Official Lyric Video)

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