ノエル&リアム、ギャラガー兄弟の充実したコラボ歴 Oasis 30周年イヤーに“集結”するか
ジャンルや世代、過去の悪口さえも超えて繋がるリアム・ギャラガー
一方で、リアム・ギャラガーに関してもジョン・スクワイアとの「Just Another Rainbow」以前から、さまざまなアーティストと積極的にコラボレーションを行なってきた。ソロキャリアの初期(厳密にはBeady Eye解散後、ソロ活動前の期間)におけるもっとも象徴的な出来事の一つは、2015年に『TFI Friday』(イギリスで1996年から2000年にかけて放送された娯楽番組)が復活特番を放送した際に披露した、ロジャー・ダルトリー(The Who)との「My Generation」だろう(しかもドラムはザック・スターキーである)。リアムがThe Whoに大きな影響を受けているのは有名な話だが、このパフォーマンスにおける見事な仕上がりぶりや、その後も交友を深める両者の相性の良さ(2019年にはリアムがThe Whoのツアーのサポートアクトとして出演。ロジャーもインタビューでたびたびリアムについて好意的に語っている)は、今思えば、以降のソロ活動での目覚ましい活躍を予兆するものだったのかもしれない。
この出来事がきっかけとなったのかは不明だが、ソロアーティストとして初のアルバムを発表した2017年は、これまでにないほどリアムがオープンで自由なムードを纏っていた1年となった。アメリカ・カリフォルニアで開催されたFoo Fighters主催のフェスティバル『CAL JAM』では、同バンドのステージにジョー・ペリー(Aerosmith)とともにサプライズで登場してThe Beatlesの「Come Together」を披露。さらにイギリス・マンチェスターで開催されたチャリティコンサート『One Love Manchester』にもサプライズ出演したリアムは、それまで幾度となく喧嘩を売り続けてきたColdplayのクリス・マーティン&ジョニー・バックランドと一緒に「Live Forever」を披露するという驚きの光景を見せたのである(このパフォーマンス以降は同バンドをすっかり褒めるようになったのもリアムらしい)。
Foo Fightersとの共演に触発されたのか、リアムの現時点での最新作である『C’MON YOU KNOW』(2022年)の先行楽曲として発表された「Everything’s Electric」は、デイヴ・グロールとの共作(ドラムもデイヴ自身が担当している)による、劇的にサイケデリックでありながらも突き抜けた爽快感に満ちた痛快なロックナンバーに仕上がっている。
「Everything’s Electric」の時点でファンの想像を超えてきたリアムだが、(あくまでバンドでの制作にこだわっていたBeady Eye時代とは異なり)著名プロデューサーのグレッグ・カースティンと全面的にタッグを組み、外部のクリエイターも交えて楽曲制作を行うようになっていったソロ作品の中でも、最新作の開かれっぷりは相当なものだ。エズラ・クーニグ(Vampire Weekend)との「Moscow Rules」や、PC Musicの活動で知られるダニー・L・ハールとの「I’m Free」など、若いアーティストが楽曲制作やプロデュースで参加し、さらには「Better Days」においてトーヴ・ローの「bad days」のメロディを引用するという離れ業まで披露している(トーヴ・ローの名前はしっかりクレジットに記載されている。言葉の対比が興味深い)。リアムの唯一無二の武器である歌声を軸にして、ジャンルや世代を超えた様々なアーティストが集まっているのである。それは、現在のリアムの愛され方にも通ずるものではないだろうか。
あるいは、いや、だからこそ今のリアムは、「Just Another Rainbow」のようにOasis時代を想起させるようなコラボレーションについても、堂々と行なえるようになったのかもしれない。個人的に、これまでのリアムのコラボワークスで最も好きなのが、まさに90年代を共に生きた盟友である元The Verveのリチャード・アシュクロフトが2021年に発表した「C'mon People (We're Making It Now) (feat. Liam Gallagher)」だ。リチャードが2000年に発表した楽曲をアコースティックギターを中心に再構築して二人でデュエットした同曲は、原曲以上にポジティブで楽観的なムードに満ちた、聴いていて思わず笑顔になってしまうような信じられないくらいの傑作である。元々は20年以上前の楽曲とは思えないくらいの瑞々しさは、まさに両者の「今」のありのままの魅力が詰まっているからこそ感じられるものだろう。
ついに迎えたOasis 30周年イヤー 果たして再結成は実現するのか?
ここまでまとめてきたように、ノエルとリアムがソロキャリアを重ねながら、少しずつライブや楽曲制作で他のミュージシャンとの繋がりを深め、現在のオープンで、自由にのびのびと音楽を楽しんでいるような充実した時期を迎えるようになっていった。昨年の両者の来日公演がそれぞれキャリアハイを感じさせるような素晴らしいものだったのも、ここまでに書いた流れと決して無縁ではないだろう。
ところで、「またその話かよ」という反応が返ってくるのは重々承知の上で書くと、2024年はOasisがデビュー30周年を迎えるアニバーサリーイヤーである。となると、どうしても期待してしまうのが(これまでに数えきれないほど話題に上がってきた)再結成だ。以前書いたように(※1)、現状の同バンドを巡る状況については「めちゃくちゃ再結成したいけど兄に直接頼むのは絶対に嫌」なリアムと「そこまで乗り気ではないが、やりたいならまずは直接話に来い」という姿勢を貫くノエルの意地の張り合いが続いている感じだ。もはや勝手にしてくれと放り投げて終わりたいところではあるが、もし、ここまでに書いてきたアーティストたちがゲストとして集結するOasisの再結成ライブが実現したら……と妄想すると、やっぱり観たいというのが本音である。
少なくとも今年6月からはリアムのソロによる『Definitely Maybe 30 Years』ツアー(同名デビューアルバム全曲と当時のシングルB面曲を披露)が開催される予定となっているが、果たして兄弟が揃ってOasis30周年を祝う日は来るのだろうか。どれだけジャンルや世代、過去の軋轢を超えても、やっぱり最後に立ち塞がるのは「兄弟」という壁なのである。
※1:https://realsound.jp/2023/06/post-1346585.html
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