[Alexandros]、ロックバンドとしての本能を解放させた『NEW MEANING』ツアーファイナル
[Alexandros]が東京、大阪、名古屋で開催したツアー『[Alexandros]"NEW MEANING TOUR 2023"』が、12月9日のZepp DiverCity(TOKYO)公演で幕を閉じた。
『NEW MEANING TOUR 2023』と聞いて、2017年に開催されたツアー『[Alexandros] Tour 2017 "NO MEANING"』を思い出した人も少なくないだろう。作品をリリースしたからツアーをまわるのではなく、“やりたいからやる”だけのツアーだから『NO MEANING』。今回の『NEW MEANING TOUR 2023』の前後にもリリースはなかったこと、また東名阪のZepp会場でそれぞれ2日間ずつライブを行うというツアースケジュールも共通していることから、同じく、“やりたいからやる”というテンションで組まれたツアーだったのだと推測できる。
では、2023年冬現在の彼らの“やりたいこと”とは何だったのか。「声出しNG」「ライブ中はマスク着用」など感染症対策のためのガイドラインが完全になくなったこの状況下で、ライブハウスで思いっきり遊ぶことだ。[Alexandros]がワンマンツアーを行うのは、2022年7月~2023年1月に開催されたホールツアー『But wait. Tour? 2022』およびアリーナツアー『But wait. Arena? 2022 Tour』以来11カ月ぶり。あのタイミングでホール&アリーナツアーをまわろうと決めたのは、ツアー計画当時、ライブハウスはキャパシティに対して100%の観客を入れられなかったものの、席のある会場であればそれが可能だったからだと後にメンバーは語っていた(※1)。そのツアー中にマスクをつけた状態での声出しが可能になるなど、やがて状況は変わっていき、2023年5~6月のツーマンツアー『THIS SUMMER FESTIVAL TOUR '23』では、ついに諸々の制限がない状態でのライブが可能に。要素は出揃った。だからこそ、ライブハウスでのワンマンツアーを、という流れだ。
[Alexandros]がどんな想いでこのツアーを組んだのか、会場にやってきたファンはよくわかっていたのだろう。開演直前、BGMの音量が一段階上がると、そろそろメンバーの登場かと察したフロアの熱も一段階上がる。Underworld「Born Slippy」に合わせて踊ったり手拍子したりと、観客は完全にハイになっている。そこに川上洋平(Vo/Gt)、磯部寛之(Ba/Cho)、白井眞輝(Gt)、リアド偉武(Dr)が登場。フロアはすでにあたたまっているとメンバーも即座にわかったことだろう。全員で音を掻き鳴らしてから締めるSE「Burger Queen」のラスト、川上がギターを床に置き、エフェクターをイジりながら、空いているほうの手でリアドへ「もっともっと」と指示を出す。リアドも応じ、一連の流れに観客が歓声を上げる。
バンドもファンも求めているものが明らかであれば、セットリストは必然的に明快に。この日[Alexandros]は、「Kick&Spin」「city」「Starrrrrrr」「ワタリドリ」といったライブアンセムを惜しみなく盛り込んだ、アッパーチューン中心のセットリストを用意。全部で24曲演奏されたが、バラードに分類できる曲は「spy」「Plus Altra」「空と青」くらいか。“緩急”で言うところの“緩”を意図的に排した、“急”に“急”が次ぐアグレッシヴなセットリストを本能を解放させながら歌い鳴らし、フロアを大いに沸かせた。
観客一人ひとりを心の底から興奮させるバンドの演奏も、大音量のシンガロングや歓声が上がりまくり、人が人の上を転がったりしているフロアも凄まじい熱量。ライブの序盤では川上が「昨日も声デカかったけど、今日のほうがデカいです、イヤモニ意味ないんで外します。直接届けろ!」と伝えていたが、ゆえに発生した「お前らがうるさすぎて、入り間違えたじゃねえか(笑)」とライブらしいハプニングすらも、この3年間には起こり得なかったものだと思えば愛おしい。川上がマイクから離れ、顔を上げれば、煽らずとも、サビでなくとも大合唱が起こる。どの曲も観客一人ひとりの心のアンセムとして浸透していること、そしてバンドとファンがお互いに信頼し合っていることが伝わってくる光景だ。
そんななか、「リアドが入って我々の代表曲がひとつ増えました。今年やっとこの曲を本当の意味で演奏できています」(川上)という言葉とともに披露されたのが、2021年リリースの「閃光」だ。曲中に設けられたシンガロングパートは長らくメンバーのコーラスによって埋められていたが、今はみんなで一緒に歌うことができる。曲自身が本来求めていた形を取り戻した感慨と喜びに包まれたシーンは、間違いなくこのツアーのハイライトのひとつだった。