電気グルーヴ、[Alexandros]、奥田民生……福島に根付く2年目の大型フェス『LIVE AZUMA 2023』を観て

『LIVE AZUMA 2023』レポート

 音楽フェス『LIVE AZUMA 2023』が、10月14日、15日に福島県福島市・あづま総合運動公園で開催された。初開催にして2日間で延べ2万人を超える来場者を記録した昨年に続き、今年は2万5000人を動員するなど、あらゆる面でアップデートを遂げた今年の『LIVE AZUMA』。たくさんの奇跡が起きた2日間を、福島あづま球場を舞台としたAZUMA STAGEを中心に振り返っていきたい。

 『LIVE AZUMA』が2年目にしてすでに確立しているのが、多くのアーティストも称賛するそのラインナップだ。今年だけでもロック、オルタナ、ヒップホップ、テクノ、ソウル……とそのジャンルは様々で、初日のトリを務める電気グルーヴ、2日目に大トリを担った[Alexandros]という2組が象徴的だろう。

 電気グルーヴは、サポートメンバーに牛尾憲輔(agraph)と吉田サトシを加えた4人編成で、全10曲およそ50分のノンストップお祭り騒ぎ。「人間大統領」に始まり、「Shangri-La feat. Inga Humpe」「Flashback Disco(is Back!)」「N.O.」といった代表曲でフロアを沸かせていく鉄板のセットリストだ。「どうだ!電気グルーヴだ!かっこいいだろ!」「福島のみなさん最高です!」と叫ぶ石野卓球は、「かっこいいジャンパー」で〈かっこいい福島で見つけたジャンパー〉と歌詞をアレンジ。「富士山(Techno Disco Fujisan)」にはピエール瀧が吾妻山の麓で「磐梯山!磐梯山!会津磐梯山!」と叫びフィナーレを迎えた。言わずもがな福島だけのレアなアレンジであるが、絶妙にズラしてくるところが電気グルーヴであり、けれど語呂は確かに「磐梯山」の方がピッタリくるよな、などと暫く自問自答してしまった。

 大トリを飾った[Alexandros]は、「Forever Young」でライブのスタートを切る。先に同じAZUMA STAGEに出演していた奥田民生の「イージュー☆ライダー」のサビ〈僕らの自由を 僕らの青春を/大げさに言うのならば きっとそういう事なんだろう〉をアウトロに織り混ぜ、彼へのリスペクトを滲ませた。「Dracula La」「Waitress, Waitress!」「ムーンソング」とライブチューンを次々と投下。川上洋平の弾き語りでの「Adventure」を経て、ラストは「閃光」「ワタリドリ」であづま球場に壮大なスタジアムロックを響かせた。「ワタリドリ」での〈傷ついた 福島を 歌わせたいから〉をはじめ、川上は何度も歌詞に「福島」をインサートしていた。[Alexandros]が福島でライブをするのは実に10年ぶり。今のバンド名になってからは初の福島でのライブになる。『LIVE AZUMA』はもちろん、次回は福島に単独公演で戻ってくることを川上は笑顔で約束していた。

 先述した2組をはじめ、どのアーティストも思いのこもったステージを繰り広げていたが、なかでも熱量が迸っていたのがフレデリックだった。三原健司の声帯ポリープの切除手術を機に、約1カ月半の休養を挟んでいたフレデリック。サウンドチェックの「リリリピート」「YONA YONA DANCE」からすでにフロアには、ライブが大好きでたまらないミュージックジャンキーが集結していた。記念すべき活動再開の狼煙を上げる1曲目は「スパークルダンサー」。三原の力強く、艶やかなボーカルに応えるようにして、アリーナ一帯が「おかえり!」とワンマンかと見間違うかのようなうねりを起こしていく。ラストは「Wake Me Up」「オドループ」でフロア全体がダンシング。さらなる進化を遂げてリスタートを切った三原は「あなたのおかげでまた音楽が大好きになりました!よかったらまた来年とか出させてください!」と福島への再訪を誓った。ここではあえて伏せておくが、三原がライブ中に起こしてしまった唯一の後悔がその思いを助長していることは間違いない。

 筆者が忘れられないのは、奥田民生が起こした奇跡だ。今年の2日間は初日が夏を想起させるような快晴となったが、2日目は朝からどしゃ降りの雨となってしまった。2日目トップバッターを務めたハンブレッダーズの“体感300°cはある福島の芋煮汁”でしっかりと温まってきたというMCや、PUFFYが「サヨナラサマー」を例に晴天を想定して組んだセットリストだったというエピソードは、良くも悪くも野外フェスならではと言えるが、奥田のステージが始まると朝から降り続けていた雨が嘘かのように、雲間から青空が顔を出し、ついには虹までもがかかったのだ。昨年はユニコーンとして大トリを飾った奥田は、今年バンド編成の「MTR&Y」で福島にカムバックを果たした。それはまるで奥田の帰りを祝福しているかのようだった。

 昨年、東京スカパラダイスオーケストラのアクトにゲストボーカルとして奥田が登場し「美しく燃える森」を歌唱していたように、今年も多くのステージでコラボレーションが生まれた。奥田のライブにはPUFFYがゲストとして登場し「サーキットの娘」を披露。続く「さすらい」では、颯爽とステージを後にしたはずのPUFFYがコーラスとして再び姿を見せた。STUTSのステージにはPARK STAGEからC.O.S.A.、Daichi Yamamotoを迎え「Pretenders」「Presence IV」といったナンバーをラップ。さらにSTUTSがリミックスとして参加しているA_o「BLUE SOULS」を、リリースから2年の時を経てライブ初披露。塩塚モエカ(羊文学)、dodoがフィーチャリングゲストとして華を添えた。

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