向井太一×T.Kura×michico、内なる欲求に正直である大切さ 互いの想いに深く歩み寄った「TRUE YOU」制作を語り合う
「本当の自分=『TRUE YOU』を見つけるきっかけになる歌詞」(michico)
──では、その『CANVAS』に収録されている「TRUE YOU」はどのように作っていきましたか?
T.Kura:今回、ボーカルのレンジをあまり高いところへ持っていかないようにしたいというリクエストが、太一くんから事前にありました。「じゃあ、どういう楽曲にしよう?」とmichicoも含めて3人で話し合ったんですけど、とにかく僕らは好きなものが似ているんですよね(笑)。だったら例えばタイ・ダラー・サインのような、ウェストコーストのサウンドを入れてみたらどうだろう? みたいな話で盛り上がって。サウンド的にはその方向性で詰めていったら、ビーチパーティみたいな雰囲気というか、太陽の下で「イエーイ!」みたいなトラックになっていきましたね(笑)。そこにmichicoが、サウンドとはちょっとギャップを感じるような歌詞とメロディをつけてくれて。そこがこの曲の魅力です。
──確かにこの曲は、歌い出しのメロディがすごく低いところから始まるので、まるで向井さんとは別人のように感じられてドキッとします。
向井:そうなんです。そこはもう、その頃に聴いていた音楽からのインスピレーションでした。思い切り歌い上げて、歌唱力を見せつけるようなボーカルスタイルよりは、ラップとフロウの中間みたいなメロディを、ゆるく歌っているような楽曲を当時はよく聴いていたんです。例えば、一時期『SHOW ME THE MONEY』(韓国のMnetで放送されているオーディション番組)をよく観ていて、「ラッパーが歌う楽曲ってすごくいいな」と思っていたので、韓国のR&Bやヒップホップアーティストからのインスピレーションは大きかったですね。
michico:太一くんにいろんなリファレンス音源や動画を送ったんです。そこから色々と試行錯誤していった結果、「こういう感じで歌いたいです」と。太一くんが持っている新たな一面がうまく出せたと思っています。T.Kuraも私も、彼の声は低音にも美味しいところがたくさんあることをよくわかっていたので、制作中もすごく楽しかった。壁に直面することは、新しい一面を見せていくチャンスでもあるわけですからね。
向井:さっき話したように、『CANVAS』制作時期はネガティブモードに入っていて、正直「音楽をこれからやっていけるのか」というところまで落ち込んでいたんです。そんなときにmichicoさんから「最近、制作どんな感じ?」「また一緒にやりたいよね」みたいに声をかけていただいて。それで最初はレコーディングとか一切関係なくセッションを始めたんです。縛りがなかった分、今回の楽曲はいつもよりもさらに楽しく作ることができたし、「BABY CAKES」や「99' feat. CrazyBoy」とはまた全然違うタイプのボーカルのアプローチができたなと。チャレンジングでもあったし、楽しくもあった制作でしたね。
michico:確か太一くんとは去年の夏、ようやく会うことができたんですよね。そのときに彼のバイブスを直接感じて、その後に今回の楽曲を作っているから、彼の思いをより深く理解した上で歌詞とメロディに込めることができたと思う。もちろん、アーティストのことをそれほど深く知らなくても、お互い手探りで相手のことを理解しつつ作品を作っていく醍醐味というものはあるんですよ。だけど、太一くんとはテキーラを飲み交わしながらね、いろんな話をしたから(笑)。
向井:(笑)。あのときは、めっちゃ楽しかったです。
michico:また行きたいよね(笑)。太一くんはファッションリーダーだし、時代を引っ張っていく若者の象徴的な存在。だからこそ、今回はちょっとメッセージ性のある歌詞にしたかったんです。今ってSNSが普及したことにより、「こうあるべき」「こうじゃないとダメ」みたいな考え方が強くなっているのかなと思うんです。“内なる欲求”というか、本当にやりたいことやなりたい自分を追求するのではなく、何かロールモデルがあってそこに自分を合わせていくような生き方が主流になってしまっている。そういう世の中に対して警鐘を鳴らすというか、本当の自分=「TRUE YOU」を見つけてもらえるきっかけになるような歌詞が書きたかったし、タイトルを見ただけでも、そのメッセージがピンとくるようにしたかったんです。
向井:まさに、今作のタイトルに込めた意味とも通ずると思いましたし、自分はアーティストとしてどうありたいのか、どんなメッセージを発していきたいと思っているのか、ものすごく考えていた時期でもあったので、この歌詞を自然に受け止めて歌うことができましたね。コロナ禍を経て今の時代は、これまで当たり前だと思っていた様々な物事に対し、一歩立ち止まって「これってどうなんだろう?」と考える時期に入ったと思います。世の中全体が、ものすごく大きく変化していることを身に染みて感じますよね。日本はまだまだ遅れているなと思うことも多いのですが。
「ライブでは太一くんの違った一面を見れたのが印象的」(T.Kura)
──お二人は、これからの向井さんにどんなことを期待していますか?
T.Kura:実は先日、太一くんのライブを初めて拝見したんですよ。太一くんはソロでサポートメンバーを率いてステージに立って、お客さんと対峙している。その隅々まで神経の行き届いたパフォーマンスに感銘を受けました。あんなに魂を込めて歌ってたら声枯れるよそりゃ、と思って。普段スタジオでお会いするときとかは、そこまで声を振り絞って歌うことがほとんどないから、ライブではこんなに声を出すんだ……ってちょっと心配になりましたね。「伝えよう」というファンへの想いがすごく強く、「こんなに熱い人なんだな」とまた違った一面を見れたのも印象的でした。だからこそ、ファンもスタッフも彼についていこうと思うんだなと。単にクールなだけでは人はついていかないですよね。そのギャップがとにかく興味深かったし、いろんなことができる人なんだなと改めて思いました。
向井:嬉しいです。コロナ禍はライブの見せ方やお客さんとの向き合い方についてもいろいろ考える時期でした。それまでは、ノンストップで作品も出し続けていたし、ライブも制作もずっとやっていたのに、それらがバタッとなくなったんです。デビューから5年以上が経ち、その間にも素晴らしいアーティストがどんどん世の中に出てきて、その中でどう勝負していったらいいのかを本当に考えました。以前はとにかく無我夢中でやっていたんですけど、今はそれだけじゃなくて、もっと頭を使うようになりました。パフォーマンスもそうですが、楽曲やそれ以外の要素も常に変化し続けている。自分の中で“アーティスト”としての自分自身の作り方みたいなものも変わってきました。
michico:みんなが好きなものを選ばなくてもいい。太一くんが好きで、やりたいものを色濃く出していった方が、個性豊かで面白い音楽になるし、いい意味で目立つんじゃないかなと思うから。他のアーティストのこととか気にせずどんどん突き詰めていってほしいですね。好きなことに軸を置いて、ブレずにそのまま邁進していってほしい。太一くんのセンスはすごくいいんだから。
向井:ありがとうございます!
T.Kura:最近は向井くん、よく踊るようになったので、それを活かすような楽曲を今度は作りたいですよね。よりそれを見せられる楽曲をやりたい。
michico:私はバラードをやってみたいかな。とにかく、太一くんとやりたい曲がたくさんあるし、いろんなビートに挑戦したい。アフロビートとかハウスとかね。今またアトランタでハウスが流行っているんだよね。ヒップホップ系のDJがハウス系のイベントをやったりしていて。
T.Kura:例えばティンバランドがハウスをやったりしていて。
向井:へえ! それは気になるなあ。
michico:太一くん、ハウス合うんじゃないかな。私も4つ打ちのビートとかすごく好きだからやってみたい。もっとT.Kuraさんのスタジオに入り浸ってさ、普段から一緒に曲作りとかやればいいじゃん。
T.Kura:そうだよ、来なよ。
向井:お言葉に甘えて(笑)。ぜひこれからもよろしくお願いします!
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■リリース情報
向井太一
ミニアルバム『CANVAS』
6月28日(水)リリース
ダウンロード/ストリーミング
https://tf.lnk.to/CANVAS
<収録内容>
1. Young & Free
2. TRUE YOU
3. Shut It Down
4. Cosmos(TVアニメ『遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!』2年目エンディングテーマ)
5. Pilot(アニメ『TIGER & BUNNY 2』パート2エンディングテーマ)
向井太一 オフィシャルサイト
T.Kura Sony Music Publishing オフィシャルサイト
michico Sony Music Publishing オフィシャルサイト