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CrazyBoy×T.Kuraが語り合う『HIP LIFE:POP LIFE』を作り上げたピュアなクリエイターズマインド
三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのELLYによる、ラッパーとしてのソロプロジェクト・CrazyBoy。彼のアルバム『HIP LIFE:POP LIFE』は全曲新曲にして、コアなヒップホップラバーとしての顔と、三代目 J SOUL BROTHERSのポップスターとしての顔の二面性を持ったアルバムだ。そのプロデュースは、EXILEの「I Wish For You」など、数々の大ヒット曲を手がけてきたT.Kuraが担当。CrazyBoyみずからT.Kuraにプロデュースを依頼し、T.Kuraは当初冗談だと思っていたという。CrazyBoyが惚れこんだT.Kuraのセンス、そして世代を超えてのコラボレーションについて、ふたりに存分に語ってもらった。国内外で話題のCrazyBoy初のオリジナルアルバムはいかにして制作されたのだろうか?(宗像明将)
ソロは、その人自身のコアな部分をもっと意識しないといけない
ーーCrazyBoyさんのアルバムをT.Kuraさんがプロデュースすることになったきっかけはどういうものだったんでしょうか?
CrazyBoy:アルバム1個を作品にしたかったので、Kuraさんに(プロデューサーとして)立ってもらって、ディスカッションしながら僕のやりたいイメージを作りました。10年近く三代目にいて、その間ソロでいろんなスタイルを勉強しながらやってきて、やっとKuraさんに「一緒にやっていただけませんか?」って言える状態ができたので。会社としても「おまえ本気で言ってるのか?」って言われるようなことだと思うんですけど(笑)。
ーーそこまでCrazyBoyさんが惚れこんだT.Kuraさんの魅力とは何でしょうか?
CrazyBoy:僕が頭にあるものを具現化できる人ってあんまり日本にはいないので。ストイックに突き詰めてくれて、ディスカッションもできるのは、アトランタで活動してきたKuraさんが日本で一番だと思います。
T.Kura:俺を褒める会ではない(笑)。
CrazyBoy:でも、リアルでそういう感じですよ(笑)。
T.Kura:EXILEの「VIRTUAL LOVE」をレコーディングした時に言われたんじゃないかな。LDHさんとは付き合いが長いんですけど、面と向かって「アルバム全部やってください」って言われたことはなかったんです。冗談かなって流し気味に聞いてたら、何回も言うから、「あ、本気なんだ」と思って。どんな状態か聞いたら、NAKKIDくんと作っている2曲ぐらいあったけど、1曲はまだビートだけの状態で、そこからやると。スケジュールを聞いたら2カ月半とかしかなくて、「ここからやるの?」っていうところから始まって(笑)。
CrazyBoy:10曲ぐらいを2カ月でやる感じですね(笑)。
T.Kura:そうなんですよ。NAKKIDくんにもビートを頑張ってもらって、それをもとに総動員してトップラインを作ったり、僕もビート作ったり。
ーー最初はプロデュース依頼を冗談だと思っていたんですね。
T.Kura:アーティスト本人から言われたことはなかったので。「またまた」みたいな気持ちも正直あって。いつもニコニコしてるじゃないですか。
CrazyBoy:ノリで言ってるんじゃないかって?(笑)
T.Kura:「また今度やりましょうよ」的なやつなのかと思ってたら、リアルに「もうやらないといけないので」みたいな。
CrazyBoy:「マジでやるんだって感じですよね?」。
ーーすでにケツに火がついてるみたいな(笑)。
T.Kura:そうそう。でも、すごくビジョンがしっかりあるし、見せ方とか、いろんなことが頭にすごくある人だからやりやすいんです。だからブレないんですよ。そこはすごく助かりました。
ーービジョンの話になると、1曲目の「HIP LIFE:POP LIFE」からCrazyBoyさんのメッセージが語りで入ってますね。
CrazyBoy:あれは僕がやりたいと言って。もともとこの曲を聴いて「めちゃめちゃやばい!」と思って、前半をもっと長くしてしゃべりたいって言ったんですよ。
T.Kura:三代目ではエンターテイナーなんです。「素のELLYをもっと見せてもいいんじゃない?」みたいな話をした覚えがあって。
ーーサウンドでのビジョンは最初の段階からあったんですか?
T.Kura:あったものもあるし、曲によってですね。
CrazyBoy:プロデューサーとメジャーアーティストだとなかなかできないことが多いんですけど、直に1曲1曲LINEで話し合ったりして。そういうのは海外でやってきたKuraさんのスタイルに対応できました。僕のやりたい音楽性って、アメリカのアーティストと通じる部分があったし、やりとりも日本っぽくはないかもしれないんですけど、僕の中ですごく自然で。今作はコミュニケーションできた成果が出てますね。
T.Kura:グループのアーティストとソロのアーティストって、やっぱりちょっと違って。グループは全体で見せることを考えないといけないですけど、ソロって単体の人間そのものをみんなが見るので、その人自身のコアな部分をもっと意識しないといけない。
ELLYはものすごくヒップホップのマニアなので、キャッチボールできるし、すごくやりやすいと思いました。
ーーおふたりで密に打ち合わせをしながら作業をしたんですね。
T.Kura:そうですね、LINEでNAKKIDくんも含めて。曲ができたらすぐ上げて、僕も返すし彼らも返して。
CrazyBoy:本当に貴重な経験でしたね。「ここ、こうなりません?」「こうしよう」とか、LDHアーティストの中でやっている人を見たことがなかったので。この制作スタイルでKuraさんとやれたのは、楽しかったですし、僕にとって大きかったです。
ーーサウンド面では、「Pure Water」はトラップビートとサブベースによるレイジ、「Pay Day (feat. MC TYSON)」はドリルですが、こうしたヒップホップのトレンドは意識したのでしょうか?
CrazyBoy:そうですね。今回はヒップホップをやろうって思ってたし、しかもプロデューサーがKuraさんだった。アトランタで培ったものの引き出しを、まだ日本のアーティストが開けてないってわかっていたので(笑)。
T.Kura:それは無理だよね(笑)。
CrazyBoy:これはもうチャンスだし、「このタイミングだ」っていうのがあった。「Major」もそうだし、他の曲も完璧なタイミングですね。
ーーT.Kuraさんからしても、引き出しがどんどん開かれていった感じですか?
T.Kura:コントロールされてる感はありました(笑)。彼は自己プロデュースの人なので、ビジョンが明確で、欲しいものや必要なものが見えてから話す。だから言っていることがしっちゃかめっちゃかではなくて、「なるほど、じゃあこうしよう」って言える。そこで無駄な時間を使わず、建設的な作業にすぐ入れるので、すごくありがたかったですね。アーティストがエンターテインメントに昇華して、多くの人が楽しめるものにしていくための礎が楽曲じゃないですか。アーティストがやりたいことがあったほうがピッタリ合うものになるけど、それがある人って、日本では正直そんなにあんまり見たことがなくて。
ーーさらに「Ex-GIRLFRIEND / Lovers Again」と「Fly Away (feat. michico)」ではEXILEの楽曲をサンプリングしていますね。
CrazyBoy:初代J Soul Brothers時代に、Kuraさんとmichicoさんが「Fly Away」のリミックスを作っていて、そのリミックスがすごく好きだったんです。三代目のライブのダンスコーナーで使うぐらい好きで。それを2022年にまた召喚したいし、かつ今これを表現するのにどうしたらいいかっていうのもイメージがありました。特に、お金がないところからストリートで頑張ってダンスをして……というオリジナルメンバーの方々の人生と同じような歩み方を僕もしてきたので。それを僕が表現するのが間違いないなと思った時に、「『Fly Away』を今っぽくやりたいです」って言って。一発目にきたトラックで、もう完璧でした。もうテンション上がりすぎて、動画も送っちゃいました(笑)。
T.Kura:来てた、来てた。
ーー聴いている自分のリアクション動画を送ってしまった、と。
CrazyBoy:もうかっこよくて、やばすぎて。「これだー!」ってなって(笑)。
T.Kura:ノリノリだったよね。
CrazyBoy:朝8時ぐらいの動画なんですけど。完璧すぎて「早く録りたいです」って送ったのを覚えてますね。
T.Kura:今、トラップの文化が根付いているので、ハードなサウンドを目指して、アウトロはアグレッシブで曲が変わるぐらいの構成にしたんです。