雨宮天、でんぱ組.inc、ツユ、RHYMESTER、絢香……6月21日リリースの新譜5作をレビュー

 毎週のリリース作の中から注目作品をレビューしていく連載「本日、フラゲ日!」。今回は6月21日リリースの雨宮天『COVERSII -Sora Amamiya favorite songs-』、でんぱ組.inc.『ONE NATION UNDER THE DEMPA』、ツユ『アンダーメンタリティ』、RHYMESTER『Open The Window』、絢香『Funtale』の5作品をピックアップした。(編集部)

雨宮天『COVERSII -Sora Amamiya favorite songs-』

 『七つの大罪』のエリザベス、『彼女、お借りします』の水原千鶴などヒロインを演じる一方、ソロアーティスト、声優ユニットTrySailのメンバーとしても活動している雨宮天のカバーアルバム第2弾。「君は薔薇より美しい」(布施明)、「卒業写真」(荒井由実)など彼女自身がセレクトした70〜90年代の歌謡曲、ポップスを原曲へのリスペクトたっぷりに歌い上げている。以前から熱心な歌謡曲ファンであることを公言している彼女。情景やストーリー性を際立たせるボーカリゼーションからは、それぞれの楽曲に対する的確な理解、昭和を中心にした歌謡曲・ポップスへの造詣の深さが感じられる。個人的ベストトラックは、繊細にしてダイナミックな感情の揺れを描き出した「難破船」(中森明菜)。(森)

雨宮天「COVERSⅡ -Sora Amamiya favorite songs-」全曲試聴動画

でんぱ組.inc『ONE NATION UNDER THE DEMPA』

 気鋭のクリエイターと果敢にタッグを組むスタンスは今作においても不変で、特に驚かされたのが、フランスのバンド TAHITI 80とヒャダインのコラボによって生み出された「THE LAST DEMPASTARS」だ。一つひとつのサウンドのテクスチャーへの綿密なこだわりの積み重ねによって心地良い浮遊感が生まれていて、かと思えば、ギターウルフが演奏を担ったロックンロールナンバー「でんぱでぱーちゃー」や、ミュージカルテイストの「古代アキバ伝説」もある。また、盟友である玉屋2060%(Wienners)が手掛けた最新型の電波ソング「ONE NATION UNDER THE DEMPA」も収録されている。そして、そうした多様な楽曲たちを貫くのが、“『萌え』と『エモ』が失われた未知の惑星に降り立ったでんぱ組.incが、真のアキバカルチャーを取り戻すために奮闘する”という物語の力である。特に「古代アキバ伝説」は、今作のテーマであるアキバカルチャーの復権を色濃く反映した楽曲であり、また、萌えソング文化を確立させた第一人者である桃井はるこが作詞を手掛けた「イッき♡いっぱつ」も素晴らしい。強烈なコンセプトに貫かれたEPではあるが、同時に彼女たちの真髄を凝縮した原点回帰的な作品に仕上がっている。(松本)

でんぱ組.inc「古代アキバ伝説」Music Video

ツユ『アンダーメンタリティ』

 約2年ぶりの3rdアルバムに収録されているのは、MV再生回数1,000万回超えの「アンダーキッズ」、TikTokのUGC8900超えの「いつかオトナになれるといいね。」をはじめとしたヒット曲や、『「東京リベンジャーズ」聖夜決戦編』エンディング主題歌「傷つけど、愛してる。」をはじめとした人気タイアップ曲の数々。それらはどれも、音楽シーンのみならず、ユースカルチャーシーン全体に対して大きな影響力を誇る楽曲ばかりで、今作を通して聴くことで、改めて、現行のシーンにおけるツユの存在の大きさが浮き彫りになる。癒されない心の傷や、隠しきれない劣等感、埋まることのない承認欲求、そして、抑えきれない恋心。そうした繊細な心境や切実な感傷、心の奥底に塞ぎ込んでいたありのままの本音をダイレクトに表していく礼衣のエモーショナルな歌声は、これまで以上に鮮烈でパワフルな響きを放っていて、また、彼女の歌の力を増幅させていく過密でダイナミックなトラックも圧巻だ。それぞれの曲同士を繋ぐモノローグやインストも素晴らしく、アルバムを通して一つの大きな物語が紡ぎ出されていく構成も見事だ。(松本)

ツユ - アンダーメンタリティ

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