連載「lit!」第40回:ピノキオピー、ユギカ、GESO×rinri、⌘ハイノミ……ボカロ文化の“心臓”を感じさせる楽曲4選
いまでは音楽シーンにおいてメジャーな存在となったボカロ楽曲は、もともとはアンダーグラウンドな文化として存在していた。当時のメジャーにはない前衛的な音楽性、想像力を掻き立てる物語性のある楽曲。そんな独自のカルチャーを育む舞台だったゆえに、才能を開花させる個性的なクリエイターが次々と現れたのだ。ボカロがメジャーシーンに浸透した現在も、前衛的なサウンドの楽曲がトレンド入りするときには、ボカロ文化の“心臓”をあらためて実感する機会となる。今回は、数多くの作品のなかから新奇性の漂う4つの作品を紹介。
ピノキオピー「匿名M」
まずは、これまでにも前衛的なサウンドを打ち立ててきたピノキオピーの「匿名M」から。インタビュアー(WebライターのARuFa)からの質問に初音ミクが答えるQ&A形式で展開されていく同曲。コミカルな印象が強い一方、初音ミクの本音が表現されており、彼女への愛を感じられる意味深い1曲になっている。ダンスミュージックを軸としながら、サビから広がるSF系のサウンド。〈命の無い私に、あなたはどんなイメージを着せる?〉の歌詞は、初音ミクのほか、音声合成ソフトの歌声が複雑化してきている現在のボカロシーンに刺さる。
ユギカ「エウレカレプリカ」
スマホゲーム『#コンパス 戦闘摂理解析システム』に登場するヒーロー「アル・ダハブ=アルカティア」のテーマソング。イントロのアラビアンテイストのサウンドアレンジと、BPM140で重厚感のあるビートが独走するフレーズがボカロならではの実験性を内包している。言葉をギュッと詰め込んだ歌詞で畳み掛ける一方、ドロップ的なパートではダンサブルな音像を見せる、その構成が飽きることなく聴き続けられるファクター。ダイナミックなEDMの振動が空気を伝って耳に迫りくることから大音量で聴きたい1曲といえる。