「Signal to Real Noise」第十一回
菅原圭に初インタビュー ネットやストリーミングが叶えた自立した音楽活動、楽曲リメイクに取り組む理由も明かす
ストリーミング配信の収益を使って進める過去曲の“リメイク”
ーー今年4月に発表された「エイプリル」は2019年にYouTube上で発表されていた曲ですが、この楽曲を今あらためてリメイクしてリリースしようとした理由、そして楽曲が誕生したきっかけを教えてください。ちなみに原曲もまだYouTube上に残されているので、リスナーは聴き比べる楽しさもありますよね。“音楽は進化できるんだ”という物語性も感じられます。
菅原:「エイプリル」は失恋をテーマにしたと思われる方が多いのですが、実は違くて。「いま好きになった曲が20数年前の曲だった」ということを歌っています。
ーー興味深いテーマです。人が生きていく上で感じる不安や繊細な感情がエモーショナルに歌い上げられていて、のうべんばあさんによるだんだん疾走感が増していくアレンジとともに胸に突き刺さりますね。
菅原:大事な曲です。それこそ、いままでストリーミングで配信した曲の収益を使わず貯めてきていて。初期はお金がなくて宅録が多かったので、ちゃんとこれまでの曲もレコーディングをしたいなって。そのときにその資金を使おうと決めていたんです。過去曲は実は自分でミックスまでやっているので、ピッチ補正がおかしかったり、安いマイクで録っているせいで音割れしていたり、奥行きがないんですよ。いま自分で聴くと恥ずかしいんですけど。そういうこともあって音にしっかりお金をかけたかったんです。「エイプリル」のリメイクでは「みんなが聴いてくれたおかげで、ここまで音を揃えて表現できるようになったよ」ということをリスナーのみんなにも伝えたいです。
ーーリスナーとともに楽曲が進化を遂げているのですね。
菅原:私からみんなに還元できることは、作品で表現していくことなので。
ーーそれはファンの方に喜んでもらえるし、新規の方も聴き比べをすることでこれまでの菅原圭ヒストリーに共感できますよね。このインタビューが、そのガイドになったら嬉しいです。それこそ「エイプリル」のミュージックビデオではイヤホンの映像が有線から無線に変わっているとか、細やかな変化もあったり。
菅原:そうなんです。こだわりですね。やっぱり聴き比べができるというのが一番だと思っています。聴き比べ楽しいんですよ。「奥行きが深くなってる!」みたいな。ファン心理で「多くの人に聴かれたり再生回数が伸び過ぎるのは嫌だ」という人がいるかもしれないんですけど、たくさん聴いていただいた分、曲にお金をかけられるようになって、いい音になっていくんですよ。映像も作れますしね。有名になることが悪いと私は思っていなくて、その分ファンの方に還元できると思っています。いろんな菅原圭を見せていきたいし、長く音楽をやっていきたいので。
ーー「俺が育ててやったぜ!」的に思っていただくというか。1再生1再生が連なっていまに通じているという。
菅原:そう思ってほしいですね。
ーーあと、先日リメイクが発表された「crash」も大好きで。まだまだリメイクして欲しい曲がありますね。それで思ったのですが、菅原圭さんは、ジャンル的にはどんな音楽が好きな方なんですか? 曲的にはR&Bやロックもあったり。編曲によって雰囲気が変わるから幅が広く感じられますよね?
菅原:う~ん、例えが合っているかわからないのですが、埃っぽいピアノの音が好きですね。知らない情景が浮かぶ音というか。
ーーそういうところ、たしかに古川本舗さんと通じるんだな。ブレないですね。
菅原:そうかもしれないですね。
ーー古川本舗さん以外で好きなアーティストも聞いてみたいです。
菅原:サザンオールスターズとか。
ーーおおお!
菅原:キャッチーな曲が大好きなんですよ。久保田利伸さん、ゴスペラーズの楽曲の雰囲気も好きですね。
ーーキャッチーさを感じ取れる耳があるから、菅原圭の曲のフックの強さになっているのかもしれないですね。
菅原:昔の曲が大好きです。逆に最近の流行りには疎いかも。
ーーある種、いまっぽい若い世代ですよね。ひとつのアーティストにハマるというよりも、曲ごとにハマるタイプなんですね?
菅原:そうなんですよ。曲ごとにですね。
ーーそんな菅原圭さんは、人気コラボシリーズ・MAISONdesにも楽曲「Cheers feat. Tani Yuuki, 菅原圭」で参加、いや、入居されていましたが、反響などいいかがですか?
菅原:レコーディングの現場で初めてTani Yuukiさんとお会いしました。Taniさんもですが、MAISONdesは企画自体のディレクターさんもいて、外の方にディレクションしていただくというのは初の経験だったんです。菅原圭らしさもあるけど、いつもと歌い方が少し違うかもしれません。その違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。
“菅原圭”を名乗って長く活動できるアーティストになりたい
ーーせっかくなので、これも聞いておきたいのですが、菅原圭さんはこれまでいくつかアーティストネームに変化がありましたよね?
菅原:実は学年が変わったタイミングで変えていたんですよ。中学校を卒業したら名義を変えて、高校を卒業したら名義を変えて。菅原圭は、もう大学生になったので変えなくていいかなと。
ーーなるほど!
菅原:だいたい3年単位で変わっていて。以前の名義はエゴサしても埋もれてしまったりと、不便さがあって変えました。なんというか、長く活動を続けていると周囲の環境が変わっていくんですよね。それこそ「高校を卒業したら活動をやめます」「結婚するから辞めます」という人がいたり、「ここからは趣味としてやっていきます」という人もいたり。私としては菅原圭に変えたタイミングで軌道を変えたかったというのもあります。本気でオリジナル曲で音楽をやりたかったので。
ーーはい。
菅原:音楽を続ける上での未来を考えたときに思ったんです。いまだけの流行りではなくて、ちゃんと長く活動できるアーティストになりたいなって。真剣に“菅原圭”になりました。腹をくくりましたね。
ーーでは、最後の質問です。2022年、今後たくさんリリースを控えられていそうですが、菅原圭さんとしてはどんな音楽活動になっていきそうですか?
菅原:ランキング10位以内に入りたい。
ーー何のランキングに?
菅原:何でもいいんです。学生時代も何かに入賞したこともないし。まずは10位以内に入ってみたい。10位以内に入ったら5位以内に入ってみたいなって。
ーー音楽って、ランキングがある世界ですよね。
菅原:そうですね。でも、一度は入ってみたいなっていうもので。ひとつの目安を経験してみたいんです。どのみち長く音楽活動を続けたいという気持ちに変わりはないので。
ーーとなると入り口となるSpotify『RADAR:Early Noise Japan』に選出されたことは、とても嬉しいことなんじゃないですか。
菅原:そうですね。ほんとにありがたいなと思っています。ぜひ、たくさん曲を聴いてほしいです。
ーーちなみに、こうやって今後メディアに登場していくとしたら対談だったり、自分が会いたい人に会える機会が増えていくと思うのですが、お話ししてみたい人っていますか?
菅原:自分のことだけで手一杯すぎて浮かばないですね。逆に呼ばれてみたいです。「菅原圭と話してみたい!」と言われるアーティストになってみたいです。
ーーそれ、いい回答ですね。カッコいい。
菅原:聴いてくれる人が増えて「菅原圭と話してみたい」という方が増えたら、それはいいご縁ですよね。それこそ、リスナーのみんなが繋げてくれたバトンだと思います。
■リリース情報
「crash」
6月8日(水)Digital Single
作詞作曲:菅原圭
編曲:tepe(Veill)
配信:https://linkk.la/crash