ボカロPユニット estlaboの功績を今伝える ハチ(米津玄師)、wowaka、とく(toku)、古川本舗がもたらした新たな刺激

『secret base ~君がくれたもの~』 【通常盤】

 今年、放送開始の2011年から10周年を迎えたA-1 Pictures制作のアニメ作品『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(フジテレビ系、以下『あの花』)。2013年には映画化、2015年には実写ドラマ化をはじめとしてメディアミックスも展開された。『あの花』は劇場版アニメ作品『心が叫びたがってるんだ。』、『空の青さを知る人よ』同様、監督を長井龍雪、脚本を岡田麿里、キャラクターデザイン・総作画監督を田中将賀が務めた大ヒット作品のひとつ。小学生時代のメインヒロイン・めんま(本間芽衣子)の事故死をきっかけに、疎遠となった「超平和バスターズ」の男女5人が、5年後に成仏できずに現れためんまの願いを叶えるため、かつての秘密基地へと集結。それぞれが自身のトラウマに向き合い本音をぶつけ合うなかで本当の意味でのめんまとの別れへとつないでいく感動的なストーリーだ。

 なかでも心揺さぶられるのが最終話となる第11話で、めんま対5人が本心を吐露するラストシーン。成仏のサインとして身体が溶け始めるめんまが、ひとり一人に向けて好きなところを綴った手紙を、見つけた5人が開封する。そのタイミングで流れるのが、歌詞がストーリーと見事に合致したED主題歌「secret base ~君がくれたもの~ (10 years after Ver.)」(原曲はZONE)を超平和バスターズのめんま、あなる(安城鳴子)、つるこ(鶴見知利子)の3人が歌い始める。出だしの〈君と〉の後からピアノの切ない旋律が流れ出してから、サビに入る手前では過去にタイムスリップするかのように一瞬無音になるなど、映像に共鳴する同曲は、視聴者を一層の涙へと誘った。

【10周年記念】「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」ED映像「secret base ~君がくれたもの~」B ver.

 そんな「secret base ~君がくれたもの~ (10 years after Ver.)」を編曲したのは、プロデューサーユニット・estlaboのメンバー・toku(当時はとく表記)。2009年以降のボカロシーンを彩り、トップクラスの人気を誇ったハチ(米津玄師)、wowaka、とく(toku)、古川本舗により2010年に結成されたestlaboは、同曲のほか、LiSAのソロデビューミニアルバム『Letters to U』の収録曲なども手掛けた。なかでもtokuは、2011年3月5日、クリエイターによるクリエイターのための音楽レーベル<BALLOOM>を設立したことでも功績を残している。その発起メンバーとして米津玄師、wowaka、古川本舗の3人も参画。<BALLOOM>は『あの花』と似て、ある種4人にとっての秘密基地と言えるかもしれない。

 その後、音楽制作ユニット・へっどほんトーキョーとバンド・beaticaでの活動を経た現在のtokuは、歌い手・MARiAとの音楽ユニット・GARNiDELiAのコンポーザーとして活躍する一方、アンジェラ・アキ、LiSA、三月のパンタシア、浦島坂田船をはじめとした数々の人気アーティストの楽曲にも作曲・編曲を通して携わっている。今年6月には、神田沙也加などの10名のゲストボーカルを迎えた初のソロアルバム『bouquet』をリリース、今後もその活動に注目だ。

【MV】toku「ずるいよ、桜」feat.神田沙也加 Full Ver.【bouquet】

 2009年にボカロP・ハチとして活動を開始してから「マトリョシカ」「パンダヒーロー」「ドーナツホール」などボカロ楽曲のヒット曲を残した米津玄師は、2018年には『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たすまでに至った。菅田将暉や嵐といった様々な人気アーティストへ楽曲を書き下ろすなど、ボカロシーンを越えて日本の音楽シーンに風穴を開けたことは今なお記憶に新しい。

米津玄師 MV「Lemon」

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