雨のパレード、オーディエンスと心通わせたドラマティックな夜 BBHF迎えた2マンライブ『Detune』レポート
青いライトに照らし出されるなか演奏された「ESSENCE」を終えると、インタルードのトラックが流れるなか、福永が語り始める。「この5カ月、皆さんは何をしていましたか。5カ月もあれば世界は一変します。僕は4日前、祖父が亡くなりました。95歳だったんですよ。すごく長生きしたなと思いますよね」とライブの数日前に起きた出来事を明かすと、その祖父への感謝を言葉にする。そして「かと思えば、祖父が死んだ次の日に親友に子どもが生まれて。人生って不思議だなって思います。僕らもここで会っただけですけど、人生のつながりを感じています。また集まれて本当に嬉しいです。ありがとう」。感情を昂らせながら、言葉を口にする福永に大きな拍手が送られる。言わずにいられなかったという様子で溢れ出た言葉は、それまでのクールなパフォーマンスからはとても意外なものだったが、そこに込められたエモーションが、その後のライブを明らかに変えていった。
大澤の弾く鉄琴の柔らかい響きと、重厚なシンセのレイヤーが神秘的なムードを生み出していった「morning」を経て、彼らが上京後にリリースした曲「Tokyo」へ。バンドの原点のようなこの曲に込めた思いが、先ほどの福永のスピーチを経てよりリアルに伝わってくるようだ。自分自身に問いかけるような〈調子はどう?〉というフレーズが、久しぶりのライブ、そして思うところのある今日という日に、何かを思い出させるように響く。
「まだ楽しめますか?」という言葉とともに、アッパーなビートがVeats Shibuyaを震わせる「Ahead Ahead」で一気にギアを上げると、本編最後は「BORDERLESS」。大きなリズムとともに歌われる大きなメロディ。不安や迷いにとらわれながらも「前へ行け」と力強く宣言するこのラスト2曲が、ここからさらに始まっていく雨のパレードの新章を予感させるように響き渡った。
アンコールでは「いつか(雨のパレードの出身地である)鹿児島県と(BBHFの出身地である)北海道で2マンツアーをやれたらいい」と夢を語りつつ、BBHF「なにもしらない」のカバーを披露。「いろいろ立て込んでいたもので、カバーというよりほぼコピーになってしまった」と福永は笑っていたが、シンプルなアレンジで鳴らされる雨のパレード版「なにもしらない」は、そのシンプルさゆえにこのバンドの個性を際立たせていた。特に福永のボーカル。尾崎雄貴とはある意味で正反対の歌を歌う彼の声によって、楽曲ははっきりと生まれ変わっていたと思う。最後には「なつかしい曲」と言って「new place」を披露。躍動感のあるリズムによって最後の盛り上がりを作ると、3人は満足げにステージを降りていった。