My Hair is Badの存在が結成の後押しに 上越発 ミニマムジークが目指す、音楽を通して理解し合える世界

ミニマムジーク、1stアルバムに至るまで

 新潟県上越市で結成された3ピースバンド、ミニマムジークが1stフルアルバム『標本』を4月2日にリリースする。キャッチーなメロディが通底しつつも、山之内ケリー(Vo/Gt)の閉塞感に物申すような素直なメッセージに呼応し、生々しく鳴り響く12曲のアンサンブルは、ここまでの6年の活動の集大成と言える。各地でライブを重ねる中で少しずつ見えてきたというロックバンドとしてのビジョンについて、ユニークな現体制初ライブの思い出や上越のバンドシーンのことも交えながら、山之内、鍋島ヤヒロ(Ba/Cho)、オオサキケント(Dr/Cho)に話を聞いた。(編集部)

ミニマムジーク - 標本 全曲ティザー

ベース初心者のまま初ステージへ 上越EARTHで生まれた現体制

――ミニマムジークは、2019年に新潟県上越市で結成されたんですよね。山之内さんは、どのような想いでこのバンドを始めたんですか?

山之内ケリー(以下、山之内):高校生の時に「バンドやりたいな」と思ったのが始まりでした。当時は勉強も部活も何もかも上手くいってなくて。楽しくないから学校にも行かなくなって、自分がどんどん“普通の道筋”から外れている感覚がありました。だけど元のルートに戻る気力もない。そんな時に、逃げ道になってくれたのが音楽だったんです。「音楽の道だったら、自分も進んでいけるんじゃないか?」というふうに。あと、僕が高1の頃にMy Hair is Badがメジャーデビューしたのも、「バンドやりたい」という気持ちの後押しになりました。ファミリーマートとかマクドナルドが22~23時に閉まっちゃうくらい田舎だから、「音楽って東京に出てやるものなのかな?」となんとなく思っていたけど、「そうじゃないんだ」「上越でもバンドができるんだ」と思えたんですよね。

――そこからオオサキさん、鍋島さんを誘ったんでしょうか?

山之内:はい。最初に誘ったのはオオサキでした。当時の僕は上越EARTHでバイトしてたんですけど、ちょっと寡黙で僕にも厳しいPAさんが、オオサキのバンドのライブが終わったあとに「ドラム、楽しそうに叩くね」と褒めてて。僕はオオサキのバンドのライブを観て、特にヤバいとは思わなかったんですけど、「PAさんが褒めてるってことは、とんでもないドラマーなんだな」と思って。それでスタジオに誘ってみたら……「うわっ、騙された!」と思いましたね(笑)。

オオサキケント(以下、オオサキ):全然大したことなかったという(笑)。

山之内:でもまあ、気が合うし仲良くなって、それ以来ずっと楽しくやってます。ベースはもともと別の人が弾いてくれていたんですけど、辞めるタイミングでライブが2本決まってしまっていて。上越は田舎でバンド人口が少ないので、代わりのベーシストのあてがなかったんですよ。そこでEARTHのドリンクスタッフとしてバイトしてた、ナベ(鍋島)にダメ元で声を掛けて。そしたら「いいよ」って引き受けてくれたんだよね。ベース初心者なのに。

鍋島ヤヒロ(以下、鍋島):そう。しかも1週間後にライブがあるって言われて。

――かなりの無茶ぶりですね。声を掛けた方もOKした方もすごい。

鍋島:楽しそうなことには突っ込もうという性格なので。

山之内:あの時はナベに急遽助けてもらって本当にありがたかった。そのライブは結構めちゃくちゃだったと思うんですけど、3人ともちょっと軽いところがあるから、「いや、いけたね!」「できたね! 今日ヤバかったね!」みたいな感じで盛り上がって。その時のノリが、今日まで続いているような感じかもしれないです。

ミニマムジーク - エンゼル(Official Music Video)
ミニマムジーク - ファジー - Music Video

――3人が揃ってから現在に至るまで、どのように活動してきましたか?

山之内:最初の1~2年は「どうやったら人気が出るかな?」とか特に考えず、好きなように活動していました。いい曲ができたら、数分の動画を撮って、SNSに上げて……ということをゆるく続けて。そしたら、静岡さんのイベンターさんが僕たちのことを見つけてくれたんですよね。それがきっかけでammoのツアーに呼んでもらって。今お世話になってるレーベルの社長の渡辺旭さんは、昔から僕らのことを見てくれていたんですけど、あるタイミングで大阪のライブに誘ってもらいました。それ以降は県外でのライブも増えて、怒涛の日々に身を任せるような感じでしたね。揉まれていく中で、バンドの形も変わっていったと思います。

――「周りの反応は特に考えず、好きにやる」という方針ではなくなっていったと。

山之内:そうですね。音楽をやっている以上、「いろいろな人に聴いてもらいたい」と最初から思っていたものの、やり方がわからなかった……というか、自分たちの怠慢で考えていなかったんだと思うんですよ。そんな中で「じゃあどうするか」と考えられるような土壌を、周りの人たちに作ってもらったというか。そうして人からどう聴かれるかを意識するようになったら、2人の存在が僕の中でもっと重要になりました。

――というと?

山之内:制作中に2人がどんどん意見を言ってくれるようになったし、僕も、2人の声を求める気持ちがどんどん強くなってきているんです。僕は心配性で「この曲ってどうかな?」と思ってしまいがちだし、自分で作っている以上100%客観視することはできません。そんな中で、オオサキから作り手目線の意見を聞いて「やっぱりそうだよね」と進むこともあれば、ナベからリスナー目線の意見をもらってハッとすることもある。そんな2人のバランスがすごくありがたいんですよね。3人の意見を合わせたら、自分一人では予想してなかったところに辿り着くから楽しいですし、独創的な曲になっていると思いますし。曲を作るスピードも速くなってきている気がします。

山之内ケリー

――そうして3人で揉みながら完成させた楽曲が、1stフルアルバム『標本』には計12曲収録されています。

鍋島:こうして曲名を見ていると、なんだかニヤニヤしちゃいますね(笑)。

山之内:そんなに書いたのか! と思いました。12曲ってなんか嬉しいよね。

オオサキ:僕も嬉しいな。無事に完成してよかった。

山之内:アルバムビギナーすぎるコメントですみません(笑)。「12曲ぐらい録れたらいいな」という気持ちはありつつも、制作期間中は「いやー、無理かも……」と思った瞬間もあって。だから「やっとできた」という思いがあります。僕らの5~6年の活動をまとめた、内容的にも一貫性のある作品になったので、完成してよかったなと思ってます。

――1曲目「銀世界」はタイトルの通り、みなさんの住む上越の街の風景がサウンドからイメージできる曲だと思いました。イントロから包容力のあるロックサウンドが鳴っていて素晴らしいです。

山之内:ありがとうございます。リリースが4月なので、「銀世界」って季節的にどうなんだろう? という意見もあったんですけど、やっぱり僕らの代名詞と言えるような曲からアルバムを始めたいなと思って。雪国育ちのバンドならではの曲だと思うから、他の人から「この曲はミニマムジークっぽいよね」と言われても嬉しいし、自分たちとしても自信のある曲ですね。

ミニマムジーク - 銀世界(Official Music Video)

「“ミニマムジークらしさ”をあえて作らないようにしている」

――先ほど「上越はバンド人口が少ない」とおっしゃっていましたが、みなさんの活動環境について、もう少し詳しく聞かせていただけますか?

山之内:バンドの数はすごく少なくて、同世代のバンドもほとんどいないから、張り合いとかはないです。だけどその分、ツアーで県外から来るバンドと一緒にやらせてもらえる機会が多いので、むしろ恵まれてるなと思うことの方が多いですね。あと、これは上越に限らずですけど、東京や大阪などの大都市と違って、音楽のカルチャーが根づいていない地域には、「こういうバンドがカッコいい」という正解がないんですよ。だから何にも染まらず、とにかくいろいろなものにトライできる。それは地方のバンドならではの強みで、県外のいろいろなバンドと対バンしていると、「あ、このバンドってやっぱり地方のバンドだよね」とわかる瞬間があります。

オオサキ:あと、上越の人はみんな陰気だよね(笑)。上越って晴天率が低いから、インドアな人が多いんですよ。自分たちは普通だと思っていたけど、相対的には陰気なんだなって、県外の人と対バンするようになってから初めて気づきました。

山之内:めっちゃわかるわ。でも、どっちのよさもあるよね。

オオサキ:そうそう。漫画家もめちゃくちゃ多いらしいし。家にこもって何か一つのことに集中するのが得意だというのは、上越の人の強みかもしれません。

オオサキケント

――今回のアルバムには、本当に様々なタイプの曲が収録されていますね。バンドの代名詞である「銀世界」を起点として、いろいろな曲調に挑戦している印象がありました。

山之内: 「銀世界」を録ったのが一昨年の11月だったんですけど、そこから1年以上かけて、ゆっくり作らせてもらったアルバムなんです。僕らにはまだ“ミニマムジークらしさは“これ”とはっきり言えるものがないと思うんですよ。同時に、“らしさ”をあえて作らないようにもしている。その先に何があるのかは一旦置いておいて、とにかくいろいろな扉を開けてみたいというフェーズなんです。なので、今回のアルバムでは、次の作品でやらなくなる曲調があってもいいと思いつつ、とにかくいろいろなことをやってみました。制作期間をたっぷりとってもらっていたので、苦手な曲調にもじっくりと向き合うことができたのがよかったですね。エンジニアさんからたくさんのことを教えてもらったので、僕らの中でも「次はこういうことをやろう」というアイデアがどんどん生まれて。学んだことを早速反映させて、という感じで制作を進めていきました。

――例えばどの曲が、みなさんにとっての“新しい扉”でしたか?

オオサキ:僕にとっては「どうかしてる?」がそうでしたね。叩けたら絶対楽しいだろうなと思ったけど……。

山之内:板につくまではしんどいという(笑)。たぶん3人それぞれ、自分たちの限界をちょっと超えてるような曲があるんですよ。「いつかできるようになるぞ」くらいのテンションで、未来のことを見据えながら作ったアルバムなので。

ミニマムジーク - 羊(Official Music Video)

鍋島:それで言うと、自分にとっての“限界ちょい超え曲”は「羊」ですかね。今まではルート弾きが多くて、ここまでフレーズが動く曲はやってこなかったので。

山之内:この曲のベースラインは僕が作ったんですけど、ギターを弾きながら考えているので、ベースで弾いたら超キツいみたいなことが結構あるんですよ。

鍋島:フレットの幅がまるで違うからね(笑)。だからレコーディングが終わった今もライブのために練習しているんですけど、練習のしがいがあるというか。新しいステージって感じがして、すごく楽しいです。

鍋島ヤヒロ

山之内:それならよかった。僕はアップテンポの曲を書く時に、ミニマムジークのポップな一面をどう作り出そうかと悩みました。昔からあった「アイマイニーマイン」はミニマムジークの中でもわりとポップな曲で、好きと言ってくれるお客さんが多いんですよ。「だったらもっとキャッチーな曲を」と「羊」を作って、さらにその先の扉を開いたら「取り憑かれたい」ができて……という順番だったんですけど、「取り憑かれたい」が完成するまでは結構長かったですね。

鍋島:「取り憑かれたい」は、完成する前にライブでやったことがあるんですよ。

山之内:そうそう。だけどなかなか最後まで完成させられなくて。当時は「自分たちが想像していることを再現できる技量がない」という状態だったんじゃないかと思います。だけど一旦寝かせて、いろいろな曲を作ったりライブを重ねたりしているうちに、バンドとしていろいろな筋肉がついてきて。そのおかげで、やっと完成させることができましたね。

鍋島:個人的には「あの曲好きだけど、どうなったのかな?」と思っていたので、ここに来てちゃんと形にできたのが嬉しいです。

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