雨のパレード、“ライブ感と再現性”突き詰めた2020年唯一のワンマン公演 雲丹亀卓人&AAAMYYY迎えた5人体制のステージに

雨のパレード、サポート迎えた5人体制ワンマン

 12月25日、雨のパレードが『ame_no_parade LIVE 2020 “Face to Face”』をZepp DiverCity(TOKYO)で開催した。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、1月に発表した3人体制初のフルアルバム『BORDERLESS』のリリースツアーは途中で中止となってしまったものの、彼らはすぐに気持ちを制作へと切り替えて、12月23日に今年2枚目となるアルバム『Face to Face』を発表。その2日後、東京では2020年最初で最後となったワンマンライブで、彼らは初めてサポートメンバーを迎えてコレクティブへと進化した姿を見せてくれた。

 そもそも雨のパレードは海外の「new generation」に共鳴し、サンプリングパッドやシンセサイザーを積極的に導入することによって、ここ日本で新たなバンド像を示してきたが、ライブにおいては「生の音」にこだわり、ある意味アナログ的とも言えるメンバー4人の鳴らす音のみでステージを作り上げてきた。しかし、ベーシストの脱退を契機にこれまでの制限を解放すると、昨年は同期を用いたライブで確かな手応えを獲得していた。

 もはや現代のバンドは同期を使うことが一般的で、「同期を使うとライブ感が損なわれる」というイメージはかなり薄まり、昨年の雨のパレードのライブも「Ahead Ahead」や「Summer Time Magic」といった楽曲の開かれた印象とともに、十分なフィジカルを感じさせるものであった。それでもやはりもともと「バンドの鳴らす音」を信条としてきた3人は、生演奏の生み出すダイナミズムの必要性を改めて感じたのだろう。そこでただ単にもう一度ベーシストを迎え入れるのではなく、鍵盤をメインとしたもう一人のサポートを入れ、もちろん曲によっては同期も用いることで、ライブ感と再現性が高いクオリティで共存する、今回のライブに繋がったのだと言える。

福永浩平

 ベーシストは元Sawagiのメンバーで、近年は須田景凪、Awesome City Club、DISH//などのライブにも参加している雲丹亀卓人。『Face to Face』は生のベースが大きな役割を果たしている作品でもあって、雲丹亀のほか、「BORDERLESS」にも参加していた須藤優、Tempalayなどでサポートを務める亀山拳四郎、TENDREこと河原太朗の4人がベーシストとして参加。アルバムの特徴からしても、生のベースは必要不可欠だった。

 実際に雲丹亀の存在は非常に大きく、紗幕を使った演出で始まった1曲目の「if」から5弦ベースでスラップをバチバチと決め、福永が「ベーススターの曲」と話した「partagas」では、サンダーキャットばりにエフェクティブな音色でのプレイを聴かせる。大澤実音穂が生ドラムとSPD-SXを曲のカラーによって、もしくは1曲の中でも展開に合わせて使い分けることで振り幅を表現しつつ、そこに雲丹亀のベースがライブ感を与えるという関係性も非常に有機的。ボン・イヴェールにインスパイアされたという「IDENTITY」の壮大なスケール感は、リズム隊が担っている部分が大きいように感じた。

大澤実音穂

 もう一人のサポートはAAAMYYYで、Tempalayのメンバーでもありつつ、ソロとしても積極的に活動し、前述のTENDREや呂布のサポートも務めるなど、コレクティブなあり方を体現する現代のアイコンの一人。雨のパレードにとっては同世代の盟友だ。彼女が常々口にしているのは「自分がカッコいいと思う人としか一緒にやりたくない」という言葉で、彼女の参加自体がバンドの価値を示していると言っても過言ではない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる