雨のパレード、苦難の時代に歌う「乗り越えよう」というメッセージ 同世代バンドと共にシーンを築いた軌跡から考える

雨のパレード「乗り越える」というメッセージ

 雨のパレードが前作から8カ月ぶりとなる新曲「Override」を発表した。昨年はコロナ禍の影響で全国ツアーが途中で中止となり、年末に年内2枚目となるアルバム『Face to Face』を発表したものの、今年の春に予定されていたツアーが再び中止。「Override」はそんな難しい時期を過ごす自分たちに対して、そして、コロナ禍で苦しむすべての人に向けて、「乗り越えよう」というメッセージを発信する曲であると同時に、それぞれの節目を迎えている同世代のバンドに向けたメッセージが込められた1曲であるようにも感じた。

 今から5年前、2016年に発表したメジャーデビューアルバム『New generation』は、新たな時代への号砲だった。海外におけるポストダブステップ~インディR&Bの盛り上がりとシンクロしつつ、サンプリングパッドやアナログシンセを用いての、「バンドでありながらバンドサウンドにこだわらず、自由にジャンルを越境する」という価値観は、フェスでの盛り上がりを重視する当時の日本のバンドに対するカウンターとして機能し、アルバムのアートワークそのままに、シーンに風穴を開けることとなった。

 もちろん、そんなブレイクスルーは雨のパレードだけで達成されたわけではなく、多くの「New generation」があのタイミングで頭角を現したからこそ達成されたもので、その象徴となったのがSuchmosだ。Suchmosが「STAY TUNE」で〈Stay tune in 東京 Friday night〉と歌った一方、雨のパレードが「Tokyo」を発表し、ともに当時感じていたフラストレーションや違和感を曲に込めていたのは時代性を感じるが、「シティポップ」という言葉の認知の広がりとも歩調を合わせながら、TOKYO CITY発の新たな世代が次々と台頭し、2017年から2018年にかけて多くのバンドがメジャーへと進出。『New generation』に続く2ndアルバム『Change your pops』のタイトル通り、日本におけるポップスの概念が変化、あるいは拡張し、新たな土壌が築かれたのがこの頃だった。

雨のパレード – Tokyo (Official Music Video)

 しかし、ムーブメント的な盛り上がりがオーバーグラウンドに達すると、今度は逆向きの動きが起こることは世の常であり、各バンドではメンバーの脱退が起こり始め、雨のパレードにとって盟友と言える存在だったLILI LIMITは2018年末に解散。雨のパレードも2019年の初頭にメンバーの脱退を経験しているが、それでも彼らはピンチをチャンスと捉える。初めての外部プロデューサーとして蔦谷好位置を招き、ライブを意識した外向きのアルバム『BORDERLESS』を作り上げることで、バンドの新たな方向性を示してみせた。

雨のパレード – BORDERLESS (Official Music Video)

 そんなタイミングだったからこそ、コロナ禍でライブ活動ができなくなったことは、彼らにとって大きなダメージだったと言わざるを得ない。多くのバンドがライブどころかスタジオに集まることすらできない状況の中、2020年は「ネット発」と呼ばれる新たな世代が自分たちのポップスを鳴らし始め、藤井風やVaundyといったソロアーティストが注目を集めるようになり、ラッパーたちも徐々にファンベースを広げていく。そして、今年2月にSuchmosが活動休止を発表し、ひとつの時代の区切りを感じさせた。海外では以前からバンドの受難が伝えられていたのに対し、日本ではバンド人気が根強く、それ自体は今でも変わらないが、少なくとも、コロナ禍で潮目が変わったことは確かだったように思う。

 それでも、現在の日本の音楽シーンのトレンドの土壌を築いたのは雨のパレードやSuchmosの世代であることは間違いなく、その流れは決して途絶えたわけではない。やはりメンバーの脱退を経験し、苦しんだ時期もあったAwesome City Clubは今年「勿忘」を大ヒットさせて存在感を示し、LILI LIMITやPAELLASが解散した一方で、そこから派生したMO MOMAやPEARL CENTERは新たな形で活動を続けている。そんな風にそれぞれのバンドが節目を迎えているいまだからこそ、過去に『New generation』や『Change your pops』といった象徴的なタイトルを作品に冠してきた雨のパレードが、「Override=乗り越えよう」というメッセージを、同世代に向けて発信しているように感じるのだ。

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