なにわ男子、ONE OK ROCK、常田大希、The Beatlesに至るまで 裏側に迫るドキュメンタリーが求められる理由とは?
また、アーティストの「物語」だけではなく、その表現の本質に迫るタイプのドキュメンタリー作品も数多く生まれている。その一つが、昨年12月からNetflixで配信中のドキュメンタリー作品『常田大希 東京混沌 -TOKYO CHAOTIC-』だ。今作は2020年の秋から数カ月間にわたって、King Gnu、millennium paradeの制作の裏側に迫っている。特筆すべきは、millennium parade「2992」の制作に初期段階から徹底して密着した終盤のパートだ。一つひとつの音や言葉が、常田が信頼するミュージシャンたちの演奏や歌唱によって磨かれ、重なり合っていく過程は、まさに「チーム」によるクリエイティブを重んじるmillennium paradeの本質を克明に表している。こうしたドキュメンタリー作品は、ともすればコアな音楽ファン向けのニッチな作品となってしまいがちかもしれないが、逆に言えば昨今、探究心を持って音楽を深く楽しみたいというリスナーが増えているということなのだろう。『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)のような番組が、広く大きな支持を得ていることも象徴的だと思う。
また、制作過程に迫ったドキュメンタリー作品と言えば、昨年11月には、Disney+で、『ザ・ビートルズ:Get Back』の配信が始まった。今作が全世界に大きなインパクトを与えた理由の一つが、約8時間という作品全体の尺の長さだ。こうした長尺の作品は、テレビ番組など既存のメディアでは実現が難しかったはずで、今作はネット配信という新しい視聴形態が広く浸透したからこそ生まれた、全く新しい形のドキュメンタリーである。もちろん、最新のリマスター技術の貢献も大きい。画質、音質ともに、半世紀以上前の景色を映し出したものであることが信じられないほどだ。
このように、時代が変わればドキュメンタリー作品の形も変わっていく。そして、「アーティストの『物語』を共有したい」「制作の裏側に迫ることで、表現の本質を知りたい」という音楽ファンの想いに応える形で、これからも新しいドキュメンタリー作品が次々と生まれていくはずだ。