ONE OK ROCK、未知への挑戦から浮かび上がるバンドの本質 無観客スタジアムライブに密着したドキュメンタリーを徹底考察

 もしかしたら、もう二度とライブを楽しむことはできなくなってしまうのではないか。そもそもこの生活はいつまで続くのだろうか。

『Flip a Coin -ONE OK ROCK Documentary-』

 そんな閉塞感が蔓延していた2020年10月11日、ONE OK ROCKがZOZOマリンスタジアムでオンラインライブ『ONE OK ROCK 2020 “Field of Won-der” at Stadium Live Streaming』を開催した。無観客にも関わらずスタジアムでパフォーマンスを披露するという、彼らだからこそ実現できる壮大なスケールのライブは多くのファンを喜ばせ、同時に勇気を与えた。

 そしてあれから約1年が経った2021年10月21日、このライブの舞台裏に密着したドキュメンタリー映画『Flip a Coin -ONE OK ROCK Documentary-』がNetflixにて独占配信された。「コインを指で弾く」ことを意味するタイトルの本作が浮き彫りにするのは、人々と直接繋がることのできるライブをずっと大切にしてきた彼らが「無観客ライブ」というまさに未知の賭けに挑む姿である。そして、それは同時にONE OK ROCKという巨大な存在の本質が試される瞬間でもあった。

 プロジェクトの初期段階、多くのスタッフが集まったリモート会議の場で「スーパーボウルのハーフタイムショーのようなステージにしたい」と語るTaka(Vo)の姿が示す通り、今回のオンラインライブは通常のライブをただ生中継するだけではない、この状況だからこそ実現できる特別なものにしようという野心に満ち溢れていた。

 本ドキュメンタリーは、主に「メンバーへのインタビュー」、「メンバーの生活の密着取材」、「リハーサルスタジオ/ライブ会場での準備風景」、そして「本番のライブ映像」で構成されているが、その多くで無観客スタジアムライブという未知の挑戦を成功させるために試行錯誤するメンバー/スタッフの姿が映し出されている。様々なデバイスで閲覧されることを想定してミックスを検討したり、ライブ映像に合成するAR映像について議論するなど、オンラインならではの試みはもちろんのこと、カメラ越しに楽曲を届けるためにはどのような構図や演出が最適なのかを模索するなど、徹底的に普段とは違う遠い場所にいる観客にメッセージを届けるために尽力する姿が描かれている。

 だが本作は、そのために悩み、葛藤するメンバーの姿にフォーカスを当てた内容というわけではなく、むしろ「何故このような演出に辿り着いたのか」を紐解くような構造となっている。どうすれば最も理想的な形で演奏を見せることができるか? という課題に対して、メンバーがアイデアを出し、試行錯誤を重ねながらそれが形になっていき、その完成形が本番で披露されるーー本作ではその一つひとつのプロセスを丁寧に見せているのである。今回のライブではダンサーを交えて披露された「Change」や、スタジアムの客席でアコースティックセットで披露された初期の名曲「欲望に満ちた青年団」といった特別なパフォーマンスが披露されたが、それらの演出に至った背景が明確に描かれているのだ。

 例えば、この日初めて披露された新曲「Wonder」の場合は、ただ演奏するだけでは観ている側に強く印象を与えることができないという懸念から、メンバー全員で振り付けをしながらパフォーマンスをするというアイデアが生まれ、練習を重ねるごとにその形を変えていきながら、やがて一つの完成形へとまとまっていく。その過程を踏まえた上で実際のライブ映像へと切り替わっていくのだが、この流れで観ることで、無邪気に楽しんでいた配信当時に対して、観る上での視点が大きく変わっていく。

 本作の鑑賞を通して強く実感するのは、メンバー、特にTakaの持っている強大な野心とそれを実現するためのビジョンの明確さだ。今回の無観客ライブに関しても、少なくともTaka自身の中には明らかに「あるべき姿」が存在しており、だからこそ、それを実現するための試行錯誤こそはあるものの、ゴール自体に対する迷いを感じる場面はほとんどない。そして、そのビジョンはバンドのみならずプロジェクト全体にとっても明確な指針となっており、関わる人々全員がその「あるべき姿」へと向かって進んでいくのである。



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