ドミコが更新していくロックのダイナミズム 強烈な熱狂を巻き起こした『血を嫌い肉を好むTOUR』ファイナル

ドミコが更新するロックのダイナミズム

 乾いたリフが変速的に進行する「噛むほど苦い」は、まさに阿吽の呼吸を見せる演奏が主役。LEDライトやミラーボールは目にも楽しいが、主役はあくまで二人、というか、二人による演奏そのものだった。世の中への申し開きではなく、今伝えたい自分の心境でもない、ギターとドラムがかっこいい、という簡潔なメッセージ。それをリアルに伝えるのは技術であり、技術に酔いしれないプリミティブな勢いであり、それだけを突きつけるバンドの佇まいに、ふとSuspended 4thを思い出す。ルーツも違えば接点もなさそうだと思っていたが、えげつないほどビロビロ鳴っているギターソロを見ているうちに、そうでもないかと頬が緩む(スケジュールを確認したら、来年一発目の対バンはSuspended 4thだった。これは観たい)。ハードロックが今キテいる、なんてことは誰も言っていないが、古典的なギターのダイナミズムを使って、今またロックバンドのかっこよさを更新している才能がいるのは事実なのだ。

 中盤にまどろむサイケナンバーを挟んだ後は、再びハードロック魂に火をつける爆音祭へ。「問題発生です」「化けよ」「血を嫌い肉を好む」など、アルバムの軸となるラウド&ハードなナンバーを連発。頭を振り大口を開けて絶叫するさかしたも、彼のリフとユニゾンでスネアを叩きつける長谷川も、冷静さなど投げ捨てて極限ギリギリまで振り切れている。もしかすると汗が滴っていたかもしれないし(2階席なので明確には見えなかった)、やりきった表情も見せていた(こちらは終演後の挨拶で確認したので事実)。まるで体育会系ライブバンドみたいなド迫力を、宅録から始まった、いかにもインドアそうなこの二人組が見せているのかと思う。「かっけぇな、このバンド!」ーーその瞬間聞こえてきた声に、思わず握手したくなるくらい同意していた。

 アンコールで長谷川から発表されたのは、来年3月19日に日比谷野外音楽堂でのワンマンが行われるとのニュース。現在の爆音エモーショナル路線が今後ずっと続くのかはわからないが、とりあえず、霞ヶ関の夜空に響くさかしたの絶叫とギターはたまらないものがあるはず。アンコールの最後、新作の中でもひときわ切ない情感が迫る「なんていうか」を聴きながら、この曲は野音で聴くと相当酒がうまいだろうなぁ、と想像した。晴れを願います。

■セットリスト
『血を嫌い肉を好むTOUR』FINAL
2021年12月14日(火)新木場スタジオコースト

猿犬蛙馬
とけました
ペーパーロールスター
噛むほど苦い
解毒して
HAVE A NICE SUMMER
ローストビーチベイベー
ベッドルームシェイクサマー
眠れよ、眠れ
深海旅行にて
問題発生です
ばける
化けよ
びりびりしびれる
血を嫌い肉を好む
ENC.1 マイララバイ
ENC.2 まどろまない
ENC.3 なんていうか

ドミコ 公式HP

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