3rdアルバム『Nice Body?』インタビュー
ドミコ さかしたひかるが語る、ライフワークの中での音楽表現「興奮できるものって偶発的」
ドミコが、2月6日に3rdアルバム『Nice Body?』をリリースした。前作『hey hey,my my?』から約1年4カ月ぶりとなる今作は、これまでドミコが培ってきた経験や知識を作品にしつつも、よりバンドサウンドが印象的なアルバムに仕上がっている。今作までの変遷を聞くと同時に、サウンドや歌に対する独特の考えについて、さかしたひかる(Vo/Gt)に聞いた。(編集部)
自分らがやりたいことをどこまで維持できるか
一一今、ドミコの人気、知名度はぐんぐん上がっていますが。これは思い描いていた形でしょうか。
さかしたひかる(以下、さかした):いや……どうなんだろう? けっこう僕自身、どういう感じで広げていこうとか、そんなに計画的ではないんで。自分らがやりたいもの、持っているものをそのまま、どこまで維持しながら続けられるかなっていうスタンスですね。
一一どうなりたいかを考えるより、ただ自分がいいと思うものを作りたい?
さかした:そうですね。ライブもそうですけど、どういう感じで見せるかっていうことはあんまり考えないです。なんで、曲作りのベーシックもそんなに変わった気がしないし、特に実感も何もなく。まぁ、いつもどおりやれてるからいいなって。
一一そのわりには、音がどんどん骨太に、ヘヴィになってきて。もうロックンロールって言いたいような質感になっていますけど。
さかした:技術的な面とか知識の量は自然に増えていくんで、そういった意味では、時間が経ったぶんだけ変わっていくところはあります。根本的なものは変わらないんですけど。音が太くなったのは単純に経験とかの表れなのかな。ライブやって、すごい図太い音を出したら面白いっていう経験があって、そういう曲も作りたいと思ったり。ファズのリードギターが好きで。バーン! って出すのがただ気持ちいいっていうか。
一一ファースト(アルバム『soo coo?』)を聴き返すと、だいぶ違いますよね。当時はさかしたさんの妄想なのか、家の中、頭の中で描いたものという印象で。今はもっとリアルな肉体を感じるサウンドになっています。
さかした:そうですね。最初のアルバムと比べると。もともと出発点が家の延長で、ほんと宅録をアップデートしてスタジオ機材で作り上げていくようなイメージでしたけど。でも前作の『hey hey,my my?』と今回は、わりとバンドサウンドに目が行くようになった。1枚目の『soo coo?』の時は、その(宅録とバンドの)狭間でいたい気持ちもあったんですけど。今はほんと、バンドのアルバムっていう感じで音を出せてると思います。
一一普通の3〜4人組のバンドと比べても、音量は上でしょう。
さかした:確かにめちゃめちゃデカいですね、僕ら。それはただ面白いからっていう。昔、実家に住んでた時はCDもめちゃめちゃデカい音で聴いてたんですよ。田舎だから家も隣接してないんだけど、ほんと、数十メートル離れた隣の家から「うるさい!」って苦情が来るくらい(笑)。大きい音がすごく好きなんですよね。うん……普段小さい音で聴いてると勿体ないなぁ、これ聴いてるって言わねえよなぁって思ったりもする。
一一そこに理由ってあると思います?
さかした:わかんないです。なんでデカい音なんだろう?
一一若い頃を思い出すと、イライラするとボリュームを上げる、みたいなことがよくあったんです。そういう感じでもない?
さかした:あぁ……いや、穏やかな時からデカかったですね、僕(笑)。
一一そこがドミコですよね。感情とか怒り、あと反発や反抗から切り離されたところに大音量がある。音のデカさとロックスピリットみたいなものが全然比例していない。
さかした:うん。そうですね。スピリットとか僕ないですよ? 全然ない。ライフワーク。ただやってるだけって感じです。
一一かといって、なんの意味のない歌ではないわけで。
さかした:うーん……逆に、意味ない言葉をバーッと並べるほうが難しくて。考えてもないこと書くって、そっちのほうが難しいなと思います。
一一歌詞を書いている時はけっこう考えます? それとも適当な鼻歌になんとなく単語を当てはめていく感じ?
さかした:いや、けっこう考えますね。歌詞はすごく難しくて、自分がOKと思えるラインが完成するまでわかんない。ゴールがあんまり明確になくて、そこが難しいというか、面倒くせぇなぁと思ってる(笑)。
一一でも、英語に逃げはしないんですね。
さかした:いや、僕は英語喋れないんで逃げようがないんですよ。
一一インストという選択肢はなかったですか。
さかした:うーん、今のところは。それこそ初期の頃は、歌詞のない、〈アー〉とか〈ウー〉とか入れただけの曲もありましたけど。でも歌がけっこう好きなんですよ……こういう歌い方しといて(笑)。もともと歌うのは好きなんで、歌は入れたいなと思います。
一一語感が絶妙ですよね。聴き取れるようで聴き取れない。でも読むとちゃんと意味があったりドキッとしたりする。
さかした:僕もわかんないです。なんでここまで聴き取りづらいのかって。別に意図してない曲もあるんですよ。別にはっきり聴こえてもいい曲。それでも他の曲と同じように聴き取りづらいから、不思議だなぁって。
一一独特の歌い方もあるでしょうね。これって誰かをお手本にしたり、参考にしたものなんですか。
さかした:いや、それはないですね。ただ、もともと邦楽の歌でも、僕って人より言葉を聴き取れないんですよ。歌詞カード読まないと何言ってるかわかんない。ほんと明確な音楽……たとえばゆずとか。
一一え、普通に言葉が聴こえてきませんか(笑)?
さかした:やー、何歌ってんだろう? って思う。聴こえてこない。あと聴き間違えてたり。たとえば発音よく〈ピアノ〉って歌ってても自分では〈ピエロ〉にしか聴こえてなかったり。あんま言葉を聴き取る能力がないのかもしれない(笑)。歌詞カード見て「え? こういうふうに歌ってたんだ、俺こう聴こえてた」みたいなことがよくあって。自分の中ではめちゃくちゃな言葉に聴こえてるんですよね。そういう人間が作ってしまったから、あんまり上手く日本語に聴こえないんじゃないかな。
一一これはこれで個性的だし、立派なオリジナルだと思いますけどね。メッセージというものにあんまり反応しないタイプですか。
さかした:まったくしないですね。だって……回りくどいじゃないですか。言いたいことがあって、それを歌にするって。面倒くせぇ性格してんなぁと思う。口に出して言えよ、って(笑)。で、僕はあんま深い意味を持たせたくないんですね。謎解きとかも嫌いなんですよ。メッセージって、ちょっと僕には合わない。自分がその時思ったことだとか、いいなと思った響きとかでいい。何かいいなと思ったら携帯で写真撮ったりするじゃないですか、何気ないものでも。そういうのを棚にコレクションしてる感覚に近いです。
一一お気に入りを並べてるような?
さかした:そう。だから、今こういう世界でこういうことが起こってます、っていうものをみんなに伝えていく感じじゃない。ほんと、あとで自分で見返した時に「あぁ、こういうことを感じてたなぁ」っていう、そういうものとして曲を残していきたいんですね。だからどう聴かれるかとか、どう思ってほしいっていうのは、僕自身考えていないっていうか。
一一そうなると、人の評価ってどう感じるものですか。
さかした:んー、まぁ感想とかいろいろ聞くのは楽しい。「あ、そういうふうに聴こえるんだ?」っていう新しい反応があったりすると、もちろん作る側としては面白いです。
一一こいつ全然わかってねぇな、と腹が立つことは?
さかした:いや別に……多分わかんないもんだなぁと思ってるんで。そこにイライラしたりはしないです。ただ、勝手に「これはこういう歌だ」って決められたり「ここの部分はこうなんですよね?」って言われると……どうなんだろうなぁって困っちゃいますね(笑)。けっこう曖昧にしておきたいところもあるんで。