ドミコ、PEARL CENTER、Shohei Takagi Parallela Botanica、John Natsuki……フェティッシュな声の魅力を持つアーティスト

 そもそもは物神、呪物などの意味を持つ“フェティッシュ”という言葉とその概念。現代では対・人でもモノでも軽い偏愛といったニュアンスに使われることが多い感覚だ。これをボーカリストの声の魅力の一要素に引き寄せて考えてみようと思う。“偏愛”自体、個人の好みであるから、一概に「フェティッシュな声が何か」は明言できない。という断りを入れた上で、一つの事実として今の日本でヒットする楽曲の“声”の要素を取り出してみると、ピッチが正確、複雑であっても記譜できるようなメロディ、声量の豊かさ、音域の広さなどがあると思う。その「上手い」という要素以外に、自分でも知らなかった感覚を開いてくれる刺激的な経験を与えてくれる声に私たちは「フェティッシュ」を感じるのではないだろうか。

 そこで直近のリリースから、フェティッシュな声の魅力を持つアーティストを具体的に挙げていこうと思う。もちろん、楽曲構造やサウンドや歌詞の内容と声の魅力は分かち難い。それも踏まえて聴いてみよう。

ドミコ『VOO DOO?』

 まずは4月15日にミニアルバム『VOO DOO?』をリリースするドミコのさかしたひかるの声。筆者が初めてドミコの音楽に触れたのは2014年の「深層快感ですか?」の頃のライブ。少し粘着質でありつつ、両性具有っぽいさかしたの声質はグラムテイストのガレージロックと相まって、耳に張り付いて離れなくなった。印象としてはT-REXのマーク・ボランとも通ずるところがあり、日本のロックバンドでは滅多に聴いたことのない声とボーカルだったのだ。その後、投げやりでダルい発声に自然なファルセットやラップに近い歌唱も加わり、昨年のスマッシュヒット「ペーパーロールスター」では、サビの〈ララララララ〉の後の逃し方に天性のセンスを感じるまでに。『VOO DOO?』から先行配信されている「化けよ」では独特のエフェクトを施したサイケデリックなループギターに溶け込むように、日本語の意味が剥がれ落ちた音としての声が混沌としたムードを増幅する。もう1曲の先行配信曲「びりびりしびれる」はガレージロック寄りのドミコ節。メロディらしいメロディがない上に少しフラットする投げやりなボーカルは、スピーディな楽曲を綱渡りしていくようなスリルが味わえる。

ドミコ(domico) / VOO DOO?(Official Trailer)
PEARL CENTER「Humor」

 元PAELLASのボーカルで新バンドPEARL CENTERの活動も本格化したMATTON。PAELLASの初期、シューゲイザーなどインディーロック感のあるサウンドの頃から、繊細でセンシュアルな声で、切なさや儚さを体現してきた彼は、ロックよりR&Bシンガーの表現に近いところで持ち味を発揮してきた。ストイックな緊張感のあるサウンドの中でリスナーの心を震わせてきたのがPAELLASでの表現だとすると、PEARL CENTERの楽曲はもう少しポップに開かれたアレンジも散見され、MATTONの声の表現も、のびやかなメロディに素直に乗っているように聴こえる。3月に配信スタートした新曲「Humor」では声自体に含まれるセンシュアスさが前に進むメロディと相まって、穏やかな温かみを生んでいる。サウンドのベクトルが近いこともあるかもしれないがBlood Orange(デヴ・ハインズ)のはにかみを含んだ声、時代を遡るとカーティス・メイフィールドの優しく祈るような声を想起させる部分もある。過剰なセクシーさではなく、知性を含んだ色気が声という具体になった印象だ。4月8日リリースのニューEP『Humor』にも期待したい。

PEARL CENTER – Humor(Official Music Video)

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる