HKT48、宮脇咲良卒業など分岐点迎えた2021年 矢吹奈子、田中美久ら新たな柱の成長も
4年ぶりとなる待望の2ndアルバム『アウトスタンディング』をリリースしたHKT48。結成10年目を迎えた2021年は、グループにとって分岐点となりそうなトピックスがたくさんあった。
そのなかでも最大の出来事と言えるのは、6月の宮脇咲良の卒業だ。1期生として2011年から活動してきた宮脇。2012年6月6日、HKT48が初めて参加した『AKB48選抜総選挙』でグループから唯一、名前を呼ばれたのも彼女だった。順位は47位、得票総数は6635票。ネクストガールズ(33位から48位までのメンバーで構成)入りを果たすなど、結成間もないHKT48の認知度を押し上げた。宮脇は翌年以降の『選抜総選挙』でも順位を上げ続け、2015年に初のベスト10入り(7位)、2018年には3位にランクインするなど、48グループの看板メンバーの1人になった。
宮脇咲良が言い聞かせ続けた「絶対に腐らないようにしよう」
そんな宮脇を語る上で欠かせないのが、常に頼れる存在が近くにいたことだろう。そのひとりが、2019年に卒業した兒玉遥だった。
宮脇が初めて『選抜総選挙』でランクインを果たした2012年。誰もが、HKT48は宮脇が絶対的存在に君臨して回っていくものだと考えていた。しかし同年、AKB48から指原莉乃の移籍が発表された。その影響もあり、一般的にはHKT48=指原莉乃というイメージが強くなった。さらに9月、田島芽瑠が2期生の一員として加入。プロデューサーの秋元康から「松井珠理奈(SKE48)と同格の10年に1人の逸材」と称された田島は、12月発表のHKT48の初オリジナル曲「初恋バタフライ」でセンターに。2013年3月リリースのデビューシングル表題曲「スキ!スキ!スキップ」でも、田島がセンターをつとめた。
書籍『HKT48成長記 腐ったら、負け』(2015年/角川春樹事務所)では、兒玉が当時について「正直、(宮脇)咲良がセンターだったら受け入れられたと思うんです」と、加入して間もない田島のセンター抜擢に抵抗感があったことを明かしている。宮脇も同書にて、握手会時「隣のレーンが芽瑠ちゃんで。その時、自分のレーンだけ人がいないように見えちゃったんです。逆に芽瑠ちゃんのレーンはすごく人がいて……これ、はじめて話しますけど……それを見て『辞めよう』と思ったんです。それからは、『いつ辞めようか』ってことばかり考えていました」と葛藤を口にしていた。
2ndシングル『メロンジュース』(2013年)の表題曲でも田島と朝長美桜の2期生コンビがダブルセンターをつとめることになった。しかしその際、宮脇と児玉は「これから、どんなことが起こっても、お互い、絶対に腐らないようにしよう」「もし、お互い腐っちゃったり、ブレそうになったら注意し合おうね。諦めないように!」と約束を交わして前を向いたという。越えるべき壁が常にあった宮脇。しかし、だからこそ大きく飛躍した。「腐ったら、負け」という不屈の精神性は、宮脇が卒業した2021年以降もグループに引き継がれていくことだろう。
矢吹奈子がIZ*ONEでの活動を終えて復帰
今年5月、そんな宮脇とともにひとまわり成長してHKT48に戻ってきたのが矢吹奈子だ。2人は2018年8月、日韓合同のオーディション番組『PRODUCE48』のファイナリスト20名に残り、宮脇は最終結果2位、矢吹は6位でIZ*ONEのメンバーの座を勝ち取った。
しかし2人はオーディションのなかで、世界水準のK-POPシーンと自分たちの実力差を痛感し続けた。雑誌『HKT48 Special 2019』(2019年/日経BP)で矢吹は「能力ごとのクラス分けが始まって、あまりに韓国のメンバーがすごいので、これは私の出る場所ではないなって」と自信を失いかけたと話し、宮脇も「韓国から参加しているのは練習生だと聞いていたのですが、見せ方もすごくうまいし、ダンスのレベルが違いすぎて。これがなかなか日本から世界に行けない理由だなと痛感しました」と語っていた。
しかし、異国の地での活動は宮脇、矢吹を飛躍させた。特に矢吹は、IZ*ONEでの経験をHKT48で大きく生かしていくことになるだろう。『アウトスタンディング』のリード曲「突然 Do love me!」で単独センターをつとめることになった矢吹は、ABEMAニュースのインタビューで、今回のアルバムを通して「HKT48を新しく変えていく」と意気込んだ(※1)。
さらにミュージックビデオでも、撮影現場で「AKBグループのMVだと、このくらいの画角で歌をうたうシーンが出てくるんですけど、物足りない感があるのかなと思って、それをなしにしたり。そうやって意見を出してみました」と、率先して制作にも取り組んだそうだ。
宮脇卒業後のHKT48は、矢吹がリーダー意識をさらに高めてグループを牽引していくのではないだろうか。