ジャンルの境目を浮遊する現代のミクスチャー KroiからNIKO NIKO TAN TANまで魅力を紐解く

2010年代後半からリンクしていく国内外のミクスチャー

 2作のEPと1作のフルアルバムをリリースしたKroiは頭一つ抜け出ているが、ファンク、ソウル、ヒップホップ、ジャズ、フュージョン、R&Bからロックまでジャンルの境目を浮遊するサウンドが魅力の現代のミクスチャーバンドの存在感が、リスナーにとって自然な存在になってきた2021年。

 この盛り上がりの背景には先鋭的な洋楽リスナーの嗜好と、国内でもリンクするような胎動がすでに2010年代後半に起こっていたことが挙げられるのではないか。フライング・ロータスが主宰するレーベル<ブレインフィーダー>所属のバンド/アーティストーーサンダーキャットやHiatus Kaiyoteらが、ヒップホップにもロックにも時代性を求めるタイプのリスナーに現代のグルーヴを提示したこと。また、タイラー・ザ・クリエイターのオルタナティブヒップホップグループ・Odd Future所属メンバー含むThe Internetの日本での人気、メンバーであるスティーヴ・レイシーがVampire Weekendの『Modern Vampires of the City』に参加していたことでインディーリスナーの耳に届いたり、彼がプロデュースしたソランジュに還流したリスナーもいるだろう。

Hiatus Kaiyote – ‘And We Go Gentle’ (Official Video)

 同時にこうした海外のコレクティブ的な動きにリンクするように日本に出現したのがmillennium paradeだ。King GnuのJ-POPのセオリーを踏んだキャッチーな曲展開とは異なり、明確なサビやAメロ、Bメロといった視点ではない構造。よりジャンルレスな手法に耳が馴染んだリスナーは同時にTempalayやBREIMENなどのコラージュ的なバンド/アーティストも好んで聴いている傾向が窺える。ストリーミングで音楽を聴く中で出会うこともあれば、昨今の洋邦混交フェスが背中を押したという経緯もコロナ禍前の布石だ。

millennium parade – Bon Dance
BREIMEN「CATWALK」Official Music Video

ありそうでなかった、Kroiの摩訶不思議なミクスチャーサウンド

 そうした下地もあってか、Kroiのありそうでなかった摩訶不思議なミクスチャーサウンド(及び楽曲)は瞬く間にストリーミング上位にランクイン。メジャーデビュー作でもある1stフルアルバム『LENS』は基本的なジャンルはファンクだ。だが、ソングライターでボーカルの内田怜央が書く、ダウナーだったり哲学的なマインドで書かれたリリックとデモをメンバーが各々自由度の高いアレンジで組み上げていった結果、横ノリの心地よいナンバーにも良い意味での違和感やシュールな要素が入っていたりもする。サビはアガるが歌い出しからAメロはどこか抜き足差し足っぽく、ボーカルもファルセットとラップが怪しげな「Balmy Life」、スタンダードなファンクかと思いきや曲中で拍がモタるパートが癖になる「sanso」、キーボードの千葉大樹のJ-フュージョン趣味たっぷりな「ichijiku」など1曲ごと個性が屹立。高いスキルを持ち抜けのいいオルタナティブなサウンドを確立したばかりだが、11月17日リリースのEP『nerd』では幕開けの「Juden」から一段、分厚く図太くなったサウンドが聴ける。グランジファンクなニュアンスはインディーズ時代のEP『hub』にもあったが、それをもっと明快にしたヒップホップ×グランジな「pith」、ジャズフュージョンのコードワークやサウンドと奇妙な夢を立体化するような浮遊感のある「WATAGUMO」など、自分でも知らなかった感情の蓋が開くような新機軸が満載されている。

Kroi – Balmy Life [Official Video]
Kroi – WATAGUMO [Official Video]

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