Tempalay、業界内外から寄せられる期待の眼差し カオス的音楽で表現する価値観のアップデート

Tempalayに寄せられる期待の眼差し

 いきなり個人的な印象になるが、今いちばん日本の、というか筆者も暮らしている東京のムードをビビッドに表現しているバンドはTempalayなのではないかと思っている。昨年11月の新木場STUDIO COAST(現USEN STUDIO COAST)でのワンマンライブでメジャーリリースを発表、12月9日にワーナー・ミュージック・ジャパンのレーベル<unBORDE>から配信シングル『EDEN』をリリース。日に日に増し続けるこの3人組への注目度を見るに、いよいよ時代とピントが合ってきたというか、Tempalayに時代が追いついてきたというか、そういう感じがするのである。断言するが、2021年は間違いなくTempalayの年である。

 前身バンドをもとに2014年に結成されたTempalayは、シーンに登場した直後から東京のインディシーンを中心に熱視線を浴び続けてきたバンドだ。結成翌年の2015年には正式リリースを待たずにFUJI ROCK FESTIVALの若手登竜門「ROOKIE A GO-GO」のステージに立ち、さらにその翌年2016年には1月にリリースした1stアルバム『from JAPAN』を引っさげてアメリカ・テキサス州オースティンで開催される音楽見本市SXSWにも出演を果たすなど、Tempalayは早くから独自の立ち位置で成長曲線を描いてきた。

 海外ツアーを行ったり、Unknown Mortal Orchestraのオープニングアクトを務めたり、洋楽系フェスでも邦楽系フェスでも存在感を放ったり、そのポジショニングと個性は同世代のバンドのなかでも際立っている。とくに、2018年にオリジナルメンバーであった竹内祐也(Ba)の脱退と前後してそれまでサポートメンバーだったAAAMYYY(Cho・Synth)が正式加入、小原綾斗(Vo/Gt)、John Natsuki(Dr)とのトライアングルが固まってからは、音楽的にも、あるいはライブパフォーマンスの面でも、飛躍的な進化を遂げたといっていい。

 と、ここまで書いて、肝心の音楽がどんなものなのかを一切説明していなかったことに気づいた。気づいたのだが、これまた言語で説明するのがとても難しい。一言でいえばサイケデリックでローファイ、そして歌メロだけでなくギターリフにシンセにドラムのフレーズと、曲中で絶えず主役が入れ替わりながら展開していくような複雑怪奇な構成とどこかSF的な世界観が持ち味なのだが、そうやって具体的に音楽的特徴を挙げたところで、このバンド特有の「匂い」と「引力」は伝わらないだろう。

Tempalay 「革命前夜」 (Official Video)

 たとえば2017年に配信された、彼らにとっての代表曲のひとつである「革命前夜」。R&Bっぽいグルーヴが心地よい曲なのだが、ふらふらと揺れ動くように鳴っているシンセのリフと小原のハイトーンボイス、そして突如宇宙にふっとばされるような間奏部のスペーシーな響きが相まって、聴き始めたときと聴き終えたときではまったく違う場所にいるような感覚になる。あるいはBTSのRMがSNSでピックアップしたことで話題となった「どうしよう」。AAAMYYYによる浮遊感のあるコーラスワークとループするリズムが得体のしれない夢見心地を描き出しながら、現実の向こう側の深淵へとリスナーを強制連行していくようなこの曲の世界は、少し間違えたらグロテスクなギリギリのエロスを感じさせる。

Tempalay "どうしよう" (Official Music Video)

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