DADARAY、三者三様の挑戦で作り上げたバンドの最新形 「今まで以上に川谷くんが任せてくれるようになった」

DADARAYが語る、バンドの最新形

 フルアルバムとしては4年ぶりとなるDADARAYの新作『ガーラ』が素晴らしい。休日課長のレシピ本を原案としたドラマ『ホメられたい僕の妄想ごはん』の主題歌「Ordinary days」を含む13曲は、キャッチーなメロディとジャンル横断的な幅の広いアレンジを高いレベルで両立させた充実の仕上がり。演奏陣には過去作にも参加している木下哲(Gt)と佐藤丞(Dr)に加え、ギターに真壁陽平とtricotのキダ モティフォ、ドラムにtoeの柏倉隆史とDALLJUB STEP CLUBのGOTOを迎えて厚みを増し、さらにはシティポップブームによる再評価が進む八神純子の「黄昏のBAY CITY」(1983年)をカバーするなど、話題性も豊富だ。

 もともと「川谷絵音プロデュースの新プロジェクト」としてスタートしたDADARAYだが、これまで以上にメンバー3人がそれぞれの色を出し、お互いを輝かせることによって、新たなバンド像を見事に提示。これまでの作品は常に「DADA~」というタイトルだったが、「祝祭」を意味する『ガーラ』と名付けられた本作からは、そんな現在のバンドのポジティブなムードが確かに感じられる。(金子厚武)

コロナ禍において救いになったDADARAYの活動

DADARAY

――DADARAYの3人はそれぞれDADARAY以外での活動もあるわけですが、コロナ禍を通じて自身の音楽活動を見つめ直す中で、改めて自分にとってのDADARAYという場所をどのように感じて、どのような心境で今回の制作に臨んだのでしょうか?

えつこ:DADARAYとしては、まず去年のツアーが中止になってしまったのが大きかったです。これまではライブができることが当たり前だったけど、それが難しい状態になってしまって、違和感みたいなものはすごくありました。ただ、そんな中でも川谷絵音は止まることを知らない男なので、ちょこちょこ制作があって、私もそこに携わっていたので、そこまで気落ちすることはなかったですね。とはいえ、いつもと同じことができないストレスはあって、自分自身このままじゃいけないと思ったので、今までやってこなかったことに挑戦して、すごく身になった期間ではありました。

――そうやって身につけたことを今回の制作に注ぎ込んだと。REISさんはどうですか?

REIS:ホントにこれまで生きてきた中で経験したことのない状況で、当たり前にやっていたライブやスタジオワークも一瞬でなくなって、「どうなっちゃうんだろう?」という不安と、健康面での不安が一気にバーンって来て、正直最初は真っ暗というか。(2020年の)夏くらいになって、少しずつみんなが動き出してからも、これまでの活動の仕方と今の社会の状況のバランスをどう取って、どう共存させていけばいいのかっていうのは、正直今も悩んでいるところではあります。でもその中でDADARAYの活動は、一人で悶々と考えてる時間を溶かしてくれるというか、制作に没頭できる時間が自分にとっての救済だったなって。なので、このアルバムの中にはコロナ禍に入る直前に録った曲もあるけど、一枚通して「この作業ができている幸せ、一緒に音を出せる幸せ」みたいなものが入っている気がします。

休日課長

――今の話が「祝祭」を意味する『ガーラ』というタイトルとも繋がってたりしますか?

REIS:そうだったのかはわからないんですけど(笑)。

――(笑)。コロナ禍を経ての心境について、課長はいかがですか?

休日課長:コロナ禍になって、黙々と一人で音楽を聴く時間が増えました。もちろん、これまでも音楽はずっと聴いてたんですけど、「黙々と一人で聴く」って、最初に音楽にハマった頃の聴き方に近いというか。そこから受けた刺激をDADARAYに持って行って、それに対して反応してくれるメンバーがいるのは大きかったですね。インプットしたものをアウトプットできる場所であり、しかも、自分が努力した分、2人からの跳ね返りがすごいので、今思えばそれに救われてたのかなと思います。

――やはり前作からの2年の間にそれぞれ身につけたものがあって、想いを持って制作に臨んだからなのか、今回のアルバムすごくいいですよね。

えつこ:……いろんなバンドにそう言ってるんじゃないですか?(笑)

――そんなことないよ(笑)! これまでのDADARAYの作品の中で今回が一番好きかもしれない。

えつこ:ホントに―!?

休日課長:なんでそんな疑り深くなってるの?(笑)

――本人たちの手応えとしてはどうですか?

REIS:私としては、新感覚なんですよね。アルバムの楽曲を作っていく中で、大体その間にライブがあって、新曲の反応を見たりして、すでに自分の身体にある程度曲が染みついた状態でリリースされることが普通だったと思うんです。でもコロナ禍でライブができなくなって、配信ライブで新曲を披露したりはしたけど、お客さんの反応を直で見ることはできなくて。そういう中で出来上がった新曲たちだから、初めての感覚なんです。

――確かに、外からのリアクションがないと、自分たちだけで客観的に判断するのは難しい部分もありますよね。えつこさんはどうですか?

えつこ:フルアルバムで言うと前作は4年前で、その頃はまだ「川谷絵音のプロジェクト」というか、ビジネスライクな感じで制作を進めていた部分もあったんです。でも、今回の曲は今まで以上に川谷くんが3人にいろいろ任せてくれるようになって、その分自分たちでジャッジをしなきゃいけないことも増えて。そういう意味では、思い入れも強いし、より3人の意志を尊重することで、バンドとしてのカラーがさらに広がったと思います。ただ、さっきREISも言ってたように、リアクションがまだわからない中で、これまでのDADARAYが好きだった人がこれを聴いてどう思うのかなっていうのはあって。もちろん、「今の方が好き」と言ってくれる人もいると思うけど、『DADASTATION』の頃みたいに、もっと川谷絵音の色が強い作品が好きな人は「変わっちゃった」と思うかもしれないし、そこの反応は不安ではあります。

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