川谷絵音が作る“サビ”はなぜ口ずさみたくなる? 休日課長新バンドDADARAYへの提供曲などから分析
先日、休日課長(ゲスの極み乙女。)による新プロジェクト・DADARAYが、「イキツクシ」のMVを公開した。同曲は、川谷絵音(ゲスの極み乙女。/ indigo la End)が楽曲制作を担当したことでも話題となっている。川谷はゲスの極み乙女。とindigo la Endのボーカルだけでなく、全楽曲の作詞作曲を手掛けてきた。DADARAYの「イキツクシ」は、冒頭から<取られても 取られても>と繰り返される歌詞と、単純ではないのに不思議と耳に残るメロディなどが特徴的な、川谷の作家としての才能が溢れ出た楽曲だ。
川谷はこれまでも自身のバンドの他に、夢みるアドレセンスの「大人やらせてよ」、SMAPの「愛が止まるまでは」「アマノジャク」「好きよ」、山下智久の「戻れないから」、チームしゃちほこの「シャンプーハット」で作詞・作曲を手掛けている。川谷が書く歌詞は言葉数が多く、韻を踏んだり、サビで似た言葉を繰り返すことが多い。<I love you I love you>(SMAP「愛が止まるまでは」)<怖くない 怖くない>(夢みるアドレセンス「大人やらせてよ」)<でも戻れないから 心は二つもないから>(山下智久の「戻れないから」)……。この“繰り返し”と“韻を踏む”というのがつい口ずさみたくなる理由だ。そして、ブラックミュージック、ジャズ、ヒップホップ、J-POPといった様々なジャンルをバランスよく取り入れたメロディや、J-POPの「Aメロ→Bメロ→サビ」というテンプレートとは異なる、たとえば「イキツクシ」では「(印象的な)サビ→Aメロ→Bメロ」といった構成で耳の肥えたリスナーもうならせ、曲が頭から離れなくなる。
川谷がこうしたキャッチーさとマニアックさが絶妙に同居した音楽を作るわけは、音楽的ルーツにあるだろう。インタビュー(参考:https://www.m-on-music.jp/0000095398/3/)では音楽的原体験にT.M.RevolutionやEXILEを挙げ、10代の頃を振り返り「テレビから入ってくる音楽ばかり触れてました」と語っていた。一方で、ゆらゆら帝国やRadioheadからの影響もあり、「初めはちょっと意味わかんないぐらいのほうがよくて、そういうのは最初のバンドの曲にも現れてる」という。(参考:http://natalie.mu/music/pp/gesu_indigolaend)リスナーは川谷の作る「初めはちょっと意味わかんない」メロディや歌詞、タイトルに惹きつけられ、気づけば口ずさんでいる。今回のDADARAYの「イキツクシ」でももちろん、そんな“違和感”と“心地良さ”のバランスを実に器用に保ち続けているのだ。
2バンドを掛け持ちしていたことや、過去のインタビュー(参考:http://natalie.mu/music/pp/gesu_indigolaend)では「プロデューサー志向はありますね。でも今すでにバンドでプロデューサー的な立場ではありますが(笑)」と語っているように、楽曲提供に留まらないプロデューサーとしての才能の片鱗を見せているように思う。彼が今後どんな行動に出ていくのかは未知数だが、プロデューサーとしての活躍も楽しみに待ちたい。
(文=村上夏菜)