川谷絵音に聞く、Kizuna AI×花譜コラボ曲で感じたバーチャルアーティストの特異性「この先は有利というか、可能性しかない」

川谷絵音に聞く、Kizuna AI×花譜コラボ曲で感じたバーチャルアーティストの特異性「この先は有利というか、可能性しかない」

 川谷絵音が作詞・作曲・編曲を手がけた、Kizuna AIと花譜によるコラボ曲「ラブしい」が話題を集めている。同曲は、eカルチャーを愛するファン、クリエイターのための超没入エナジードリンク『ZONe』が展開する『ZONe immersive song project』への参加楽曲。『ZONe』のコンセプトであるImmersive=没入をテーマにした同プロジェクトでは、様々なアーティストの新しい楽曲・MVをサポート。今回はKizuna AI×花譜コラボのほか、Gorilla Attackやyamaとインターネット/デジタルミュージックと親和性の高い新鋭アーティストが参加している。

 川谷曰く「最近やってなかった“川谷絵音っぽさ”を思い切りやりました」という「ラブしい」は、疾走感のあるリズム、華やかなアレンジ、印象的なリフレインを効果的に使ったメロディが一つになったアッパーチューン。川谷の独創的なポップセンスを改めて体感できる優れた楽曲だ。

 このほか、ソロプロジェクト「美的計画」、坂本真綾、BENIへの楽曲提供など、さらに活動の幅を広げている川谷。「ラブしい」の制作を中心に、プロデュースワーク、楽曲提供に対するスタンスについて語ってもらった。(森朋之)

川谷絵音から見た、バーチャルアーティストの存在感

川谷絵音
川谷絵音

ーーまずは“Kizuna AI×花譜”に提供した「ラブしい」のことから聞かせてください。川谷さんにとって、バーチャルアーティストはどんな存在だったんですか?

川谷絵音(以下、川谷):実は全然知らなかったんです。歌い手さんとかはもちろんチェックしていたんですけど、VTuberにはそれほど関心が向いてなくて。Kizuna AIさんの名前は知っていましたけど、歌を歌ってらっしゃるのは、今回の楽曲提供のオファーをもらったときに初めて知ったんです。お二人のこれまでの楽曲を聴かせてもらって感じたのは、「ヨルシカやYOASOBIなどと近いものがある」ということですね。花譜さんの曲を作っているカンザキイオリさんもそうですけど、曲の作りも今っぽいし、作り手とボーカリストの関係という意味では同じ括りだと思ってます。歌い手は顔を出していない人も多いですけど、彼女たちがバーチャルな存在で、アバターがいる。違いはそこだけなのかなと。

ーーなるほど。「ラブしい」の制作に関しては、どんなオーダーがあったんですか?

川谷:「テンポは速めで」という話はありましたね。あとは打ち合わせのなかで、二人が歌うことの必然性を汲み取りながら作りました。自分(川谷絵音)っぽさを求められているところもあったので、冒頭のリフレイン感を含めて、わりとわかりやすく“らしさ”を出したところはあるかな。最近自分のバンド界隈では、ゆったりしたテンポのオシャレな感じの曲が中心なので、「ラブしい」みたいな雰囲気の曲を作ったのは久しぶりでしたね。

ーーもちろんKizuna AIさん、花譜さんの声質も考慮しながら?

川谷:はい。二人の声質、全然違うんですよ。花譜さんはいい意味で不安定なボーカルで。僕自身も揺れる声が好きだし、魅力的な歌声だなと思いました。Kizuna AIさんは真っ直ぐな声なので、歌い分けもテキパキできましたね。左と右に振り分けて、ユニゾンのパートは真ん中に置くとか、パン振りもやりやすったし、2人で歌う意味のある曲に出来たと思います。

ーー〈夜間飛行〉など、ロマンティックなSFっぽさがある歌詞も印象的でした。

川谷:曲を作っているときから、宇宙空間の暗さみたいなものが頭の中に浮かんでいて。楽曲もスペーシーですからね。〈共鳴中心世界線〉は制作中に浮かんできたフレーズで。さっき「顔を出しているかいないだけで、歌い手としては同じ括り」と言いましたけど、アバターがあればそこに意識が行くし、良くも悪くも矛先が向いてしまう。VTuberが歌うんだけど、聴いている側も共感できるようなテーマの歌詞にしたかったし、かなり大きなテーマを持って作ってましたね。

Kizuna AI × 花譜 – ラブしい (Prod. 川谷絵音)【Official Music Video】

ーーそのテーマは、川谷さん自身の問題意識にもつながっているんでしょうか?

川谷:そうですね。様々な矛先が様々なところに向いてしまっているなかで、結論として「気にすんなよ」で終わってしまいがちなんだけど、「いや、そうは言っても気にしちゃうじゃん」って。「ラブしい」の歌詞では、二人が補い合ってる感じにしたかったんです。Kizuna AIさんと花譜さんは今の状況を共有できる二人だし、彼女たちが頑張っている姿を描くことで、その奥に隠された問題も伝わるんじゃないかなと。

ーーすごくシリアスなメッセージが込められているんですね。一方でアレンジは派手な作りになっていて。

川谷:うん、派手にしましたね。Kizuna AIさん、花譜さんの過去の曲は派手めなものが多かったし、二人が合わさるとなれば、派手にせざるを得ないというか(笑)。MVのビジュアルを思い描いたときに、管楽器が頭の中で流れていたので、その音を入れて。自分のイメージもかなり入ってますね。

ーーボーカル録りのディレクションに関しては?

川谷:歌録りには立ち会っていなくて、「こういうふうに歌ってください」とも言ってなくて。出来上がったものを聴いたときに、仮歌とはだいぶ違っていたんですよ、いい意味で。そういう違いは普段のレコーディングでもあるんですけど、いままでは歌う人の表情や喋り方を知ったうえで、「こういうふうに歌ったんだな」という感じだったんですよ。でも、VTuberの場合は絵しか見てないし、不思議な感じでしたね。

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