GARNiDELiA toku、多彩な女性シンガー10名に贈るカラフルな楽曲群 ソロアルバム『bouquet』で再確認する才能

GARNiDELiA toku『bouquet』レビュー

 GARNiDELiAのコンポーザー・tokuがソロアルバム『bouquet』を6月16日にリリースした。昨年グループ結成10周年という節目のタイミングを迎えたtokuが送るこのアルバムには、10人の多彩な女性ゲストボーカリストが参加。それぞれの歌い手に向けた異なる10種類の花を用意し、彼女たちのためだけに花束(=ブーケ/bouquet)を作るかのように楽曲を制作するというその手法は、長きにわたりコンポーザー/アレンジャー/プロデューサーとして活躍してきたtokuの才能をベストな形で表現したものだと断言できる。

 GARNiDELiA結成前から“とくP”名義での音楽活動を行なってきたtokuは、ボカロ楽曲の発表に加え、アンジェラ・アキやLiSA、田村ゆかり、春奈るな、井口裕香、TrySailなどへの楽曲提供、SuperflyやFLOW、綾野ましろなど数多くの編曲を手掛けてきた。また、活動母体であるGARNiDELiAでも数々のアニメソングを制作し、高い評価を獲得している。

 アルバム発売に先駆け、tokuはアルバムにも参加した鈴木このみ、やなぎなぎをゲストに迎えたプレミアムなライブ『toku ✕鈴木このみ✕やなぎなぎSpecial Live「bouquet」』を6月6日、Billboard Live YOKOHAMAにて行っている。このライブでは鈴木、やなぎが歌唱するアルバム収録曲に加え、各シンガーの持ち曲カバーやGARNiDELiA「SPiCa」のセルフカバーなども用意され、改めてアレンジャー/プロデューサーとしての個性を再認識する絶好の機会となった。この日はtokuのキーボード/ピアノのほか、ドラム、ベース、ギターというシンプルなバンド編成で、もともとロック色の強い鈴木のオリジナルナンバーをさらにソリッドなバンドアンサンブルで表現。この流れに沿って、『bouquet』に収録された鈴木歌唱曲「青い薔薇」も原曲が持つエレクトロなテイストからダイナミックなハードロック調へとリアレンジされている。

 また、やなぎの楽曲は普遍性の強いメロディの魅力を活かしたポップなテイストで統一しつつ、彼女の持ち味でもあるエレクトロニカテイストも随所に散りばめられたアレンジに。原曲ではエレクトロニカ色濃厚な『bouquet』収録のやなぎ歌唱曲「Coreopsis」も、ミニマルなバンドアンサンブルで再構築され、やなぎの浮遊感が強いボーカルと相まって唯一無二の世界観を打ち出した。さらに、その彼女の個性に合わせてか、GARNiDELiA「SPiCa」のセルフカバーでは原曲とは異なるレゲエアレンジが施され、この日のやなぎ歌唱ブロックに合わせた統一感が生まれていた。

 このライブを経て改めてソロアルバム『bouquet』に触れると、それぞれの楽曲が声や歌唱スタイルなど、歌い手の個性に合わせて作曲/アレンジが進められていることに気づく。言い方を変えれば、各シンガーのファンが思う「彼女たちの、こういう歌/曲が聴きたかった」という理想像を、最良の形でまとめあげたのが『bouquet』に収められた10編のカラフルな楽曲群ではないだろうか。

 石原夏織の歌う「或るヒマワリ」は、彼女の持ち曲にこれまでありそうでなかったタイプの楽曲。しかし、“石原夏織らしさ”から破綻することなく、アップテンポのモダンなダンストラックの上でも彼女の歌唱スタイルの魅力を存分に味わうことができる。これは井口裕香の歌う「Lilium」や竹達彩奈歌唱による「Antheia」、三森すずこをフィーチャーした「君影草」も同様で、tokuが各シンガーに寄り添った作曲/アレンジ/プロデュースを行うことで、結果として歌い手とtoku両者のカラーをバランスよく楽しむことができるのだ。

 また、エッジの効いた歌声を持つ鈴木このみやatsuko(angela)には、彼女たちのボーカルパフォーマンスを最大限に活かしつつ、それぞれのバックボーンを反映させた楽曲を用意。鈴木の歌う「青い薔薇」は彼女の声から伝わるエモーショナルさをベストな形で表現し、atsukoが参加した「Radiata」ではデジタルハードロックと言わんばかりの個性的なサウンド&アレンジで、彼女の圧倒的な存在感を強調してみせている。

【MV】toku「青い薔薇」feat.鈴木このみ Full Ver.【bouquet】

 そういう楽曲がある一方で、彼女たちとはタイプは異なるやなぎなぎ歌唱の「Coreopsis」では、tokuがやなぎのフィールドへと飛び込み、彼女が本来持つ独特な世界観をtokuテイストで再構築。プロデューサーとしての資質が端的に表れた、本作におけるクライマックス的な1曲を完成させた。かと思えば神田沙也加には、美しく流麗なメロディが印象的なミディアムバラード「ずるいよ、桜」が用意されている。ディズニー映画『アナと雪の女王』を経て国民的支持を獲得した彼女が歌うことで、聴き手を選ばないエヴァーグリーンな楽曲へとレベルアップしたことは間違いない事実。「Coreopsis」や「ずるいよ、桜」のような一見相反するようなタイプの楽曲が1枚のアルバムの中に収められ、違和感なく楽しめるという点からも、tokuのプロデュース能力の高さが窺える。

【MV】toku「ずるいよ、桜」feat.神田沙也加 Full Ver.【bouquet】

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